第三章
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「皆俺が悪いって言ってきて」
「ここまで来いとだな」
「言ってきました」
「そうだな、まあとにかくここまで来てくれたからな」
神奈川の横須賀から秋田の本庄までというのだ。
「雪もものともせず」
「ここは凄いですね」
「秋田だからな」
つまり雪国だからだというのだ。
「冬はいつもこんなものだ」
「そうですよね」
「寒いし雪にも苦労したな」
「ええ」
「その苦労に免じて娘には家に帰る様に説得する、女房と一緒にな」
女房のお母さんつまり俺から見ればお義母さんにというのだ。
「そうするからな」
「それじゃあですね」
「娘はわし等の言うことなら聞いてくれるからな」
実は俺の言うことにも結構頷いてくれる、ただし間違ったことについてはそれは違うとちゃんと言ってくれる。
「だからな」
「それで、ですね」
「ちゃんとな」
「女房にはですか」
「怒りを収めてな」
そのうえでというのだ。
「神奈川に帰る様に言う」
「すいません」
「ここまで来た気持ちに免じてな、しかしな」
「お話がですね」
「来てくれ、行きつけの店がある」
お義父さんは俺に岩みたいな表情のまま言ってきた。
「そこで話そう」
「じゃあ」
「行くぞ」
今からと言ってだった、お義父さんは俺を女房の実家のすぐ近くにある鍋屋に連れて行った、そこできりたんぽ鍋を食べながらだった。
俺に何時間も説教をしてきた、普段は怒らない人だけれど今回ばかりは別だった。きりたんぽを食べて酒を飲みながら俺に延々と説教をした。
俺はその説教の後で一日近くの旅館に泊まる様に言われてそこに泊まってだった。次の日の朝女房の実家に呼ばれたが。
思いきりむくれた顔の女房と会ってはっきりと言われた。
「今度言ったら絶対に許さないわよ」
「ああ、わかった」
俺はこう答えるしかなかった。
「それじゃあな」
「それでね」
「それで?」
「私の髪の毛のこと言ったから」
禿と、というのだ。
「あなたもよ」
「俺も?」
「丸坊主にしてね」
俺の頭をというのだ。
「一年位ね」
「一年か」
「当たり前よ、私怒ってるのよ」
だからだというのだ。
「それならね」
「丸坊主一年もか」
「それで許してあげるから」
「家に帰ってくれるか」
「そうするから」
「わかった」
お義父さんとお義母さんそれに女房の妹さんや妹さんのご家族も俺を刺す様な目で見ている。これでは反論しようがなかった。
かくして俺は女房の実家の近くの散髪屋で丸坊主にしてそれから二人で神奈川まで帰った。尚運賃は女房の分まで含めて俺持ちでお義父さんの飲み代も旅館の宿泊代も全部そうだった。
そして家に帰ると娘にその頭を見てから言われた。
「当然ね」
「自業自得か」
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