第三章
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「このオーストリアには」
「それはね」
「確かにそうだよ」
「ピンク色を使うなという法律はないよ」
「一切ね」
「そうですね、教会の教えにもありません」
ピンク色を使うなということはというのだ。
「一切」
「つまり禁じられていない」
「法律にも教えにも」
「だからかい」
「君はピンク色を使うのかい」
「性別で使ってはならないということも」
この考えもというのだ。
「僕はです」
「特にかい?」
「君は気にしないのかい」
「そうなのかい」
「一切です」
まさにという返事だった。
「僕は気にしないです」
「そうなのかい」
「君は男だが」
「それでもかい」
「君は気にせず使うのかい」
「そうしていきます、今度思いきり使おうかと」
笑っての言葉だった。
「考えています」
「思いきり?」
「思いきりというと」
「それはおいおい」
わかることだとだ、モーツァルトは知人達に話してだった。
そのうえで作曲を続けていった、そしてある日のことだった。
モーツァルトは皇帝でありマリア=テレジアの息子であるヨーゼフ一世に呼ばれて宮廷に参上した、この時に。
彼は何と一面ズボンの、フリルやソックスこそ白で刺繍は銀だがそれ以外は全てピンクの服を着ていた。靴も同じ色だった。
その服を着た彼を見て宮中の誰もが仰天した。
「ピンクだと!?」
「一面ピンクの色だと」
「あんな服があるのか」
「まさか特別に仕立てさせたのか」
「何と奇抜な」
「奇抜というものではない」
「異様だ」
そこまでだというのだ。
「男がピンクだと」
「それも一面も」
「何という服を着るのだ」
「あんな服を着て宮廷に参上するとは」
「一体何を考えている」
「どういうつもりだ」
宮廷の誰もが驚愕した、それでだった。
皇帝の側近達が皇帝に口々に言った。
「モーツァルト殿が来られましたが」
「何とピンク一色です」
「その服を着ています」
「信じられぬことに」
「その服で参上しています」
「おお、ピンクだね」
皇帝は側近達の言葉に面白そうに応えた。
「その色でかい」
「服の上下を統一しています」
「靴まで、です」
「何と鬘も」
「鬘の色こそ白ですが」
この色であるがというのだ。
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