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王への慰め
第一章

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                王への慰め
 ルクマーン=イブン=アードはまたの名をムアンマルという。これは長寿という意味であり元々は黒人の失われた部族の者だった。この部族はアラビアでとてつもないまでの富を持っていて武勇も誇っていた。
 しかしこの部族の土地も血筋も忘れられてしまいそうしてルクマーンだけが生き残ったのだ。それは何故かというと。
 ある老婆が街を歩くルクマーンを見て孫達に話した、外見は黒人ということを考慮しても分厚く目立つ唇でガニ股であり風采は冴えない。しかしその目には深い叡智がある。その彼を見つつ孫達に話したのだ。
「お前達はあの人の知恵だけでなく信仰も身に着けるんだよ」
「アッラーへの信仰も?」
「それもなんだ」
「そうだよ、あの人はアード族の人だけれどね」
「そんな部族知らないよ」
「どんな部族なの?」
 孫達はその部族の名前を聞いてもわからなかった、彼等もアラビアにいるがだ。
「黒人の部族だよね」
「それはわかるけれど」
「祖母ちゃんが生まれるずっと前にあった部族だよ」
 老婆はいぶかしむ孫達にこう答えた。
「昔はそんな部族もあったんだよ」
「祖母ちゃんが生まれる前って滅茶苦茶昔じゃない」
「そんなのどれ位昔なんだよ」
「この世界がアッラーに創られた時?」
「その時?」
「さて、何時なのかはわからないよ」
 何しろ自分が生まれる前だ、それでわからないというのだ。
「とてもね」
「そうなんだ」
「何時あったかわからないんだ」
「あの人はとんでもなく長生きだからね」
 だからだというのだ。
「何しろハゲタカの七倍の寿命を持っているからね」
「ハゲタカって長生きだよね」
「それもとんでもなく」
 当時のアラビアではそう考えられていたらしい、だからこそ孫達もハゲタカの寿命についてはこう言ったのだ。
 しかもだ、それだけでなく。
「その七倍って」
「滅茶苦茶長いじゃない」
「そこまで長いと」
「とんでもないよ」
「そこまで長生きの人だからね」
 それだけにというのだ。
「アード族は何時いたのかはね」
「わからないんだ」
「余計に」
「そうだよ、何でもアード族はアッラ―を信じていなくてアッラーに滅ぼされて」
 そしてというのだ。
「アッラーを深く信仰されているね」
「ルクマーンさんだけが残ったんだ」
「そうだったんだ」
「その時に預言者になりたいかとてつもなく長生きする賢者になりたいかアッラーに尋ねられて」
「賢者になったんだね」
「長生きの」
「そうだよ、信仰があればね」
 アッラーへのそれがというのだ。
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