第二章
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「私にしても父親はな」
「いるな」
「そのことは間違いないな」
「やはり」
「そうだ、いない筈がだ」
まさにというのだ。
「ない」
「そうだな」
「貴殿自身が言う通りにな」
「誰にだって父親がいる」
「そして貴殿にもだ」
「だがそれは誰が」
「一体誰だ」
エベンキ族の者達はそれがどうしてもわからなかった、それで暫く彼と彼を知る者が彼の生い立ちから調べたが。
エベンキ族の長老がその中でフルグチョン自身に問うた。
「そなたの名前はゲヴァン神に授けられたな」
「そうだ」
夜明けの太陽を司るその神にとだ、フルグチョンは答えた。
「ある日私のところに来てな」
「そうだったな、名前を授けるのはだ」
それはと言うのだった。
「親の為すことだな」
「それも父親が」
「そうだ、だからだ」
それでというのだ。
「そなたの父親はな」
「ケヴァン神ではとか」
「思った、そして夜明けの太陽を司る神なら」
長老はこのことからも話した。
「誰とも会うな」
「夜明けの太陽の光は誰もが浴びる」
「朝にな、ではそなたの母もな」
「ゲヴァン神とはか」
「会っている、身寄りがなく人と交わることが極めて少ない者でも」
フルグチョンの母の様にというのだ。
「交わる、だからここはだ」
「ゲヴァン神自身にか」
「聞いてみるか」
こう言ってだ、そのうえでだった。
フルグチョンもエベンキ族の者達もだった、ゲヴァン神が司る夜明けの太陽が姿を現わすその時にだった。
神を呼ぶ祭りを行い実際に神を呼ぶことにした、そして夜明けの時にだった。
神が姿を現わした、夜明けの太陽に相応しいその眩いばかりの姿は何処かフルグチョンに似ていた。その神の姿にだ。
エベンキ族の者達はやはりと思いつつも真相は神自身に聞こうと思いそれで神に話を聞くことにした。それでだった。
神に話を聞くことにした、すると神は彼等に答えた。
「そうだ、私がフルグチョンの父だ」
「やはりそうですか」
「まさかと思いましたが」
「そうでしたか」
「そうだ、この者の母と交わりだ」
そのフルグチョンを見つつの言葉だ。
「そしてだ」
「そうしてですか」
「それではですね」
「フルグチョン殿に名付けてくれたのも」
「そのこともですね」
「親としてだ」
その立場からというのだ。
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