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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
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次話
嘩になる彼女は、この年頃の男子からしてみれば苦手な存在だったのだ。
だが颯人だけは違った。彼は転校後女子と仲良くなる一方で男子と疎遠になっていく奏に、自分から近づいて行ったのだ。
「よぉ! 俺、明星 颯人。宜しくな!」
「お、おぅ?」
あまりにも親し気に話しかけてくる颯人に、奏は最初面食らった。だが彼の屈託のない笑顔にすぐに警戒を解くと、彼が握手の為に差し出してきた右手を何の疑いもなく掴んだ。
それは、これ以上ないくらい迂闊な行為だった。彼を知る者達であれば、颯人に差し出された手を無防備に握り返したりはしない。これは、奏が颯人の事をよく知らなかったからこそ起こった悲劇でもある。
颯人の手を握り返した瞬間、奏はその右手の感触に違和感を感じた。妙に硬いのだ。まるで人の手ではないように。
だが彼女がその事を彼に訊ねるよりも、彼の右手が手首からスポッと抜ける方が早かった。
「わぁぁぁぁぁぁぁっ?!」
「ひゃぁぁぁぁぁぁっ?!」
右手が取れたことで颯人は目を見開き悲鳴を上げ、彼の右手が取れたことと彼が上げた悲鳴に奏はひっくり返りながら悲鳴を上げた。
「ぁぁぁぁぁっ…………な〜んちゃって」
驚きのあまり腰が抜けたのかその場に座り込む奏。その彼女の前で、抜けた筈の颯人の右手が袖の中からにゅっと伸びた。これは簡単な手品だった。奏が最初に握ったのは人形の手首、彼女が掴んだと同時に彼は隠していた右手が掴んだ人形の右手を離したのだ。
種明かしをすればその程度だったが、やられた方の彼女からすれば自分は何もしていないのに突然彼の右手が取れたのだ。ただ事では済まされない。
結果──────
「あははっ! びっくり、し……あ」
「う、うぅ……」
座り込んだ奏の下に広がる真新しい水たまり。驚愕のあまり、思わず失禁してしまったのだ。
その光景に颯人は思わず気まずそうな顔になり、肝心の奏自身は羞恥に目尻に涙を浮かべながら顔を赤くする。
そして────
「バカヤロォォッ!?」
「ぐっほぉっ?!」
暴れる感情のままに奏は颯人に飛び蹴りをかました。
これがこの二人の出会いであった。
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