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魔法使いへ到る道
4.歩くのはそんなに好きじゃない
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う……あ、そうだ。お母さんが『みんなで食べなさい』っていってシュークリーム用意してくれたんだ。お昼ごはんのときに食べよ?」
「まじか。やったね」
 美味しさには定評のある翠屋のスウィーツだ。これは期待できるぞ。
「お昼ごはん……キャンプ場……お山のてっぺん……まだまだ遠い…………うぅ」
 しまった!ちょっと目を離した隙になのはが意気消沈している。くっ…作戦失敗か。
「は…ぁ、はっ、はぁ…」
 息切れしすぎ。体力が無いにもほどがあるだろう。
 …まったく、仕方ないな。
 やれやれと思いつつ、なのはに歩み寄る。リョックをいったん背中から降ろし、体の前に持ってくる。状況が飲み込めていないなのはの前で背中を向けて屈みこむ。
「ほれ、乗れ」
「え…い、いいよ。ケンジくんに、迷惑が…」
「今のままでも十分に迷惑だ。時間がもったいないからさっさと乗れ」
「うぅ、ごめんなさい。それと、ありがと」
 申し訳なさそうにおずおずと、なのはは覆いかぶさってくる。その体は疲労からか熱を持っている。春のさわやかな風が熱を冷ましていくのが分かった。
「やさしいね、ケンジくん」
「カッコつけちゃって。疲れても知らないわよ」
「なめんな。こんなチビ一人背負ったところで大して変わらん」
「ち、ちびぃ!?ケンジくんひどい!」
 なんだよお前元気じゃねえか。なら降ろすぞ。
 しかし負担がないと言うのは本当だ。例え体は小さくとも女の子一人くらいは軽いものだ。あとは徐々に積み重なっていく疲労を面に出さない我慢強さだな。
 居心地悪そうに体を動かすなのはを無視しながら、今までよりも重い足を動かした。


 そして目的地に到着した。規定時間の十分前に。当然だが一番最後だったが、しかしそれを残念に思う気持ちよりも達成感のほうが上回ってしまった。
 結局俺は終始なのはを背負っていた。遠目にキャンプ場が見え始めたあたりで降りたいというから降ろしたが、誤差の範囲だろう。さすがのなのはもラスト二百メートル前後の途中でへばったりはしなかった。
 現在十一時後五十分。集合時間は十二時で、つまりはお弁当の時間である。
 先に到着していた同級生たちは広い草原を走り回るか、シートを広げて今か今かと弁当を楽しみにしているかのどちらかだ。俺たちは後者のグループに入ることにする。
 弁当の中身はなんだろう、と三人と話しているとすぐに十二時になった。先生方が総出で散らばった生徒をかき集めている。全員いるか点呼をした後、拡声器を使った学年主任の挨拶に合わせ、
『いただきます!』
 ようやくご飯である。はらへったー。
 ランチボックスをオープン。おにぎり、タコさんウィンナー、鳥のから揚げ、玉子焼き。うむうむ。やはりこういうときのお弁当はがっつりしたものがいいよね。
 おにぎり
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