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魔法使いへ到る道
4.歩くのはそんなに好きじゃない
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をしていたすずかの発言に、ぎょっとして周囲を見回す。マジで誰もいなかった。先行している彼らの背中もいつの間にか小さくなっている。
「やべ、急ぐぞ!」
 バカの一つ覚えみたいに回り続けていたなのはの手を掴み、唸りながら尚も地図とにらめっこをしていたアリサから地図を奪い一瞬だけ確認して大まかな内容を把握。折りたたんでアリサのワンちゃん柄のリュックにねじ込んで手を掴む。すずかに一声かけてから、二人を引っ張って歩き出した。
 別に順位を競っているわけではないが、俺の中の男の子が最下位になることを拒んでいるのだよ。


 今日登る山は別に勾配が急なわけでも標高が高いわけでもない。傾斜は緩やかであり、登るにつれて普段は見ることのできない高所からの町並みを思い切り楽しむことができる、比較的楽なコースだ。
 楽なコース……のはずだったんだけど。
「ひぃ……ひぃ……ふぅ…」
 脇道に特攻して入手した長めの木の枝を杖代わりに、ひいこらひいこら足を引き摺って進む少女が一人。
 なのはちゃんであった。
 まさか…運動オンチなのは知っていたけれど、ここまで体力が無いとは思わなかった。家が道場なのになんだこの貧弱な子は。
「おーい。置いてくぞー」
「ま、待っ……てぇ…」
 息も絶え絶えな様相で、よろよろと手を伸ばすなのは。オラ、足が止まってんぞ。
「…ねぇ、ケンジくん。ちょっと休憩しようよ。休ませてあげないとなのはちゃんたおれちゃうよ」
 はらはらと心配そうにゾンビ状態の親友を眺めていたすずかが提案する。ちなみにリーダーの方はというと、腕組みをしていかにも待ってますよ的な雰囲気を出しているが、しかしさっきからチラチラと労わる様な目でゾンビを見ている。素直じゃないなぁ。
 別に俺は休憩しても構わないの無いのだが、一方でそれを渋る面もある。
 俺たちのグループはすでに最下位。おまけに前のグループとは大きく差が開いている。まあそれはいいのだ。問題は、目的地であるキャンプ場に到着していなければいけない制限時間が設定されているのだ。
 今ここで少し休憩しても、歩き出せばまたすぐなのははバテるだろう。そしてまた休憩。またゾンビ化。そうこうしているうちに時間は過ぎてしまうのだ。時間内にたどり着けなかったグループには特別課題が出されると事前に通告されている。面倒くさいので勘弁願いたい。
 以上の理由から俺は休憩をとるか否かを迷っているのだ。決してヘロヘロななのはが可愛いとか思ったりしていないぞ。
「なのは、辛い時はな、楽しいことを考えるんだ」
 適当にそんなことを言ってみる。おしゃべりで気を紛らわせて疲労を忘れさせる作戦だ。
「…たの、しい、こと?」
「そうだ。ほら、『ここからの景色きれいだなー』とか『お弁当の中身はなんだろうなー』とかさ」
「おべんと
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