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或る皇国将校の回想録
第五部〈皇国〉軍の矜持
第七十五話 六芒郭攻略戦(一)
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況でどこまで踏み込むべきか。要するに妥協点を見いだせという事なのは三者ともわかっている。
 
 ユーリアにとって最も危うい状況をもたらしたのは敵ではなく味方にあった、無能な見方ではない、優秀で”常道をわきまえた良識的な”本領の将軍達だ。
「軍参謀長殿、それでは現在の計画から修正する際に必要な物の見積もりを、正確なものは本日の夜までにお渡しします」
 ラスティニアンの慇懃かつ事務的な口調はメレンティンの中の何か焦りを掻き立てる。
  しかし、だ。”妥協点とは何か?”ユーリアは小人を意に介さない。アラノックやラスティニアンを増長した俗物の手下としか思っていない。
 だがこの派遣軍団の将校の内、少なくとも佐官以上の人間は大半が酷い扱いを受けることになるのも当然の報いだと思っている、姫様育ちとはそういうものなのだ。
 内乱で本領諸侯の現実に接したメレンティンはまた別の意見を持っているが、かといってメレンティンはそうした問題に携わる権限も能力もない。むしろそれでひどく苦労してきた性質だ。

 ラスティニアンの差し出した覚書に目を通す。これならば間違いはないだろう、思い切ってこちらを頼った内容だが受けた被害を考えれば妥当なものだ。本領砲兵将校達の計画は念入りで常識的で、堅実なものだ。
 相応の消耗を受けながらもこれならば問題なく鉄量で磨り潰せるはずだ
 ――それでも逼迫した”何か”がゆっくりと渦を巻きはじめているような感覚がぬぐえない。
  メレンティンは、この実務は順調であるがそれ以外の”何か”が上滑りしていく感覚をもって、真の意味でこれがユーリア姫にとって初めての対外戦争――つまり”統治の外で国軍として参加する戦争”であることを理解したのであった。 
 

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