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或る皇国将校の回想録
第五部〈皇国〉軍の矜持
第七十五話 六芒郭攻略戦(一)
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き、南方への機動を開始、この時点で第2軍は敗走、龍州軍は撤退に入っていた。
 第三軍は第15師団の側面を攻撃しながら浸透部隊を回収、龍州軍と連携して敵の騎兵を牽制しながら後退に成功したのである。
 これにより、約一日ほどの空白ができてしまった。〈皇国〉軍――というよりも龍州軍参謀団と第三軍、および近衛の前衛部隊指揮官たる新城直衛はこれをどうにか利用する事に成功している
 つまるところ、戦略的勝利であっても戦術的には敗北に近い、無論、敵が動かせる限りの野戦軍を投入した上陸戦において勝利し、同数の兵団を追撃に投入しただけでも十分なのだが――
 アラノックの指揮を批判する事はできない、龍州軍を壊滅に追い込み、渡海にもたついた第二軍に大損害を与える事に成功している。
 だが第三軍は秩序だった後退に成功しており、有力な戦力を保持していたのだから複数の場所で夜襲を受けたアラノックが慎重な行動をとるのはやむを得ない。誤断ではあったがこれを批判するには悪しき前例が直近で存在するのだ。
 ここで批判をすれば相互不信はますます手におえないものとなるだろう。本領軍も”前線を把握した軍団司令部としての案”を提示しているがユーリアや東方辺境領鎮定軍司令部の批判を行っていない。

「入念ですな」「精密ですね‥‥さすがは〈帝国〉本領だ」
 カミンスキィが素直に感嘆する程の砲撃であった。
「これでうまくゆけば良いのですが……」
 アラノックは最後まで言い終える前に呻き声をあげた
 だがそうはならなかった。傾斜路への火砲集中、臼砲と複数点在する特火点から放たれる近接散弾。南突角堡はそれ自体が極小要塞の連なる存在となっていることを本領将兵はその五体で味わい、物言わぬ躯となっていった

「……猛獣使いめ!」「後退の許可を」「アラノック中将に一任する」「後退せよ!」


「閣下、火力計画の修正が必要です、重砲を更に近接させる必要があります、連中は突角堡に露天で擲射砲を据えております、隣接する突角堡の中央も叩けるようにせねばなりません。
事前の攻撃から予想しておりましたが、率直に申し上げまで我々の予想を上回る規模で、蛮族共は恐るべき火力をかの要塞に保持しております
殿下、更なる砲火力の増強かあるいは……」
 ラスティニアンはそこで目を伏せるとアラノックは手を振って下がらせた。
「殿下、”総攻撃”の先陣をお任せいただいたことは恐懼感激の極みでございます。
我らは御下命とあらば短期の陥落の為に”あらゆる努力”をいたしましょう」

「貴官らが必要だと感じたものはすべて揃えよう、メレンティン参謀長と相談せよ。
私は貴官らなれば、と信じた、」

 カミンスキィを伴って辺境領姫は去っていった。

「‥‥‥」「‥‥‥」「‥‥‥」
 三人は押し黙る。この状
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