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或る皇国将校の回想録
第五部〈皇国〉軍の矜持
第七十五話 六芒郭攻略戦(一)
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案しては事後処理に頭を抱えてきた。

「――間違いなく13日後ですね?」
 藤森は慎重な口調で問いかけた。
「あぁ間違いな、随分と無茶をしたようだが軍監本部の立ち合いの下で調整が済んだらしい」
 つまりは皇主に報告する内容になる。皇主に何の実権はなくともそうなることに意味があるのだ。
「そいつは結構、しかしなぜそこまで気張ってくれたんですかねぇ」

「アイツは僕を怒らせたからな、その分の埋め合わせに必死なんだ」

 藤森はじーっと新城を検分した後に真面目腐った顔で頷いた。
「成程、納得しました、司令。ついでに南突角堡の状況を見てきます」
 新城は頬を歪めて応じた。諧謔は飯と同じく欠けたら兵の士気が崩壊しかねない必需品である。
「さっさと行け、こんなところで死ぬなよ」



同日 午前第七刻 弓野周辺 東方辺境領鎮定軍本営 会議用大天幕



「だから必要なのは皇龍道圧迫の為に主力軍を投入する事なんですよ!!
この要塞は冬営を迎えれば戦略的価値は喪失する!!
東方辺境領軍が合流した以上、もうこの要塞は放置して問題ない!!」

「莫迦を言うな!弾薬の消耗を考えろ!こんな余分な戦線を誰が担当するのだ!」

「なんだと!貴様らこそ無為な消耗戦に引きづりこむ気か!ここで無駄に重砲をバカスカ撃ち続けるくらいなら、リュウコ湾の港を確保する方が兵站も楽になる!」

「ふざけるな!ナイオウドウとヒガシエンドウを抑える上に、あの要塞を放置しろだと!?
後方の負担を考えろ!!」

「冬を越す前にコウリュウドウに一撃を咥えることが重要なのだ!そうなればもはや春に連中が他の二街道を保持する理由もなくなる!」

「楽観論で軍を動かせる状況ではない!!」

「この状況で春まで蛮族共に時間を与えるべきではない!喉元に刃をねじ込むべきだ!」

「第二軍団の案は認められん。未完成の要塞一つ落とせずに放置するなど東方辺境領鎮定軍の矜持に傷がつくわ!」

「東方辺境領鎮定軍の矜持とはいかに素早く蛮都を突き!皇帝陛下に蛮族鎮定の報を奏上する事だ!!
鎮定軍主力が結集した今こそ来春を見据えた攻勢が必要なのだ!!」

「来春を見据えるからこそ、今ここで要塞にこもった蛮軍を一掃する事が必要だとわかれ!」

 議論の体裁を保ってはいるが既に高級将校達は敵意を多分に含んだ睨み合いになっている。



「不味いですね‥‥」
 メレンティンの予想以上に双方が強硬な態度になっている――”緑制服”――東方辺境領軍と”白制服”――〈帝国〉本領軍の関係は極めて微妙だ。

 鎮定軍は”緑服”の軍であるが”白服”は皇帝直参の部隊である。更に”皇帝が東方辺境領姫の請願を受けて派遣した増援”という名目で――実際は武勲の独占を危
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