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或る皇国将校の回想録
第五部〈皇国〉軍の矜持
第七十五話 六芒郭攻略戦(一)
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芒郭の主、新城直衛が姿を現した。南突角堡帰りらしく、戦塵がまとわりついている。
「まだ予備砲撃の段階、南突角堡以外は全て擾乱砲撃のみですが本格応射準備も整えています、こちらの号令が下り次第しかけられますが」
 まだいいよ、と新城は返事をした。

「攻勢はおよそ10日後だ。南突角堡の補強を急ぐ」

「司令、よろしいでしょうか。この一月、龍爆が減少しているのも不気味でしたが、
鎮定軍司令部直轄の部隊であるのならばこれから本格的な投入が予想されます」
 この度胸は大したものだな、と藤森も内心、少しばかり感心した。
一種、犯罪結社めいた団結力をもっている大隊首脳部の中で彼だけは明確に外様だ。
それでも必要ならば臆面なく意見を述べる。

「龍兵か」「砲兵にとっては悪夢、一方的に射程外から対砲迫戦を挑まれるようなもの、龍口湾でアレがなければ我々はあれほどの大敗はありませんでした」

 新城は頷いた。藤森も異論を唱えるつもりはない、龍口湾の逆転劇を見たものはそれに関しては同意するしかない。
 事実上、第二十一師団は西津中将率いる第三軍の攻勢に有効打を打てていなかった――戦術予備の騎兵聯隊が罠にはまって磨り潰されたる程に――
 龍兵がなければ初日に騎兵師団を損耗覚悟で投入し馬堂聯隊長が率いる剣虎兵部隊と殴り合いをするしかないだろう。夜襲を行われたうえで翌日の攻勢に重砲部隊が健在であれば騎兵師団突破も難しかったであろうし、本営の陥落も十二分にあり得た。

「提案があれば考慮する」
「南突角堡は特火点化を進めているが、他の突角堡の露天火砲が叩かれる事を想定します。砲弾薬貯蔵用と人員退避用に掩体壕の拡大を許可していただきたい」

「資材には限りがある」「南突角堡を支援する南東、南西を優先します」
 新城はちらり、と藤森を見た。藤森は帳面に目を通す、まぁ悪い商売にはならんだろう、と頷いた。
「許可する、第三軍は勇戦した。そこに疑いはない。君達も同じものを示してくれている。これからもそうであってほしい」

「はい、司令」

「あぁそれと、君はこんなものではないといったが、それは正しい。僕たちはこれまで以上にひどく苦労することになるよ、間違いなく」

「はい、司令。覚悟はしています、自分は志願したのです」
 死んで終わるつもりはない、と相手の目から読み取った新城は無言で視線を落とした。


「参謀長、僕らは13日の間敵とやり合うとするそのうちの5日間、休みなく相手と総攻撃を受けると想定する。弾はあるか」

「砲弾、銃弾ともに余裕がありますが、このあとの攻勢に対する対応で変わる可能性はあります。
またひどい戦になるのでしょう?」
 いつも弾薬消費量は滅茶苦茶になる、それほどに酷い戦を龍口湾からここに至るまで幾度も立
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