アインクラッド編
各々の道
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して、男性プレイヤーが過度の接触を女性プレイヤーに行うと、女性プレイヤーの任意で黒鉄宮の監獄エリアに強制転移されるのだ。
さすがにいきなり監獄エリアに飛ばされることはないだろうが、女性に対して失礼なことをしたことには変わりない。
「わ、悪い・・・・」
「いや、大丈夫・・・・」
お互いに視線を逸らしながら、言う。
告白こそ数多くされてきたが、アスカには恋愛経験は皆無。
このような状況で気の利いた台詞など言えようはずもない。
横目でちらっとキリトの方へと視線を移すと、顔が赤くなっているが、怒ってはいなさそうだ。
キリトの様子から、とりあえず監獄エリアへさよならされる心配はないと安堵して、アスカは口を開く。
「・・・・まあ、フィールドで他のプレイヤーと出会う確率なんてかなり低いから、それだけ顔を隠してたら問題ないだろ」
キリトはマフラーの端を弄りながら、
「ありがとう」
とだけ口にした。だが、続けて、
「でも・・・・やっぱりこのマフラーかなりのレアアイテムだし、交換材料も無しにもらうのは・・・・・」
申し訳なさそうな顔をするキリト。
本当に自分は他人を守るために散々無茶をしていたというのに、他人からの好意を素直に受け取らない奴だ。呆れてしまう。
無理矢理渡すことも可能ではあるが、ならば、とアスカはかねてから聞きたかったことを、交換条件として訊ねた。
「なあ、女性プレイヤーとしての名前、無いのか?」
「え・・・?」
「キリトって名前、男性アバター用なんだろ?女性アバター用の名前はないのかって聞いたんだ。マフラーの礼はそれでいい」
流石のアスカも、本名を聞くほど無知ではなくなっている(基本的には、というか普通は本名をアバターネームには使わない、という常識を知ったのも最近だが)。
一瞬、言い淀む素振りを見せたキリトだが、
「分かった、教えるよ。でも、他のプレイヤーがいるときは使わないように気をつけてね」
と了解してくれた。
そして、女性であることを隠していない、高い、透き通った声でキリトが名を紡ぐ。
「キリカ。これが、女性アバター用のわたしの名前」
「キリカ、か・・・・」
キリカ。語尾が違うだけだが、アスカはその名前を決して忘れないように、その3文字を胸に深く刻む。
それが、桐ヶ谷和葉の名字と名前からなぞった名前であると、アスカが知るのは、ずっと、ずっと先の事である。
「名前、教えてくれてありがとう」
アスカは礼を言いながら、キリトに背を向け、上ってきた扉の方へと向き直る。
キリトが第2層のアクティベートを行うので、アスカはそれには付いていけない。
そして、短く、
「じゃあな、キリカ」
とだけ伝えて、アスカは扉をくぐり、キリカからの
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