アインクラッド編
ビーター
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
アスカはしばらく動けなかった。ほかの者たちも同様だ。呆然とした表情で、辺りの様子を窺っている。ボスを倒せたことが信じられないようだ。
だが、全員の前にボス戦で得られた経験値、コル、アイテムが表示された途端、喝采がわき起こった。
肩を抱き合って飛び跳ねる者、雄叫びを上げる者、ハイタッチを交わしている者。
1時間以上の激闘の末に勝ち残った喜びが全員の心を満たす。
アスカも何度か深呼吸を繰り返して、気持ちを落ち着けた後、右手に持つ〈ウインドフルーレ〉を見る。
刃こぼれして、研ぎ終わった時の輝きは失われているが、折れることなくこの激戦を最後まで共に戦い抜いてくれた。
――お疲れ。
内心、相棒となった〈ウインドフルーレ〉にお礼を言い、腰に吊ってある鞘に収める。
そのまま、ボスを倒した後ピクリとも動かずに地べたに座っているキリトの所へ向かう。
「お疲れさん」
アスカの声に振り向くキリト。
今日のボス攻略の立役者は疲れ切った表情ながら、笑いかけてくる。
「お疲れ」
アスカは自然と手を伸ばして、キリトの前の差し出す。
キリトは意図が分かると僅かに頬を赤くしながらも握り返してくれる。
手に力を入れて、キリトを立ち上がらせる。
すると後ろからディフェンダー隊を率いていたエギルがこちらへと向かってくる。
「見事な指揮と剣技だったな。コングラチュレーション、この勝利はあんたのものだ」
なめらかな英語を交ぜて賞賛の言葉がキリトに贈られるが、相変わらず男が苦手であるようであるキリトは聞き取れない小さな声量でぶつぶつと呟きながら、エギルの拳にこつんと拳を打ち合わせる。
「あんたも素晴らしい剣技だったな」
エギルはそのままアスカの方にも拳を持ってきたのでアスカは,
「どうも」
と、少々素っ気ない返事と共に拳を打ち合わせる。
しかし、イヤな顔一つしないエギル。にっと太い笑みを浮かべている。
3人の間に穏やかな空気が流れる。
その時だった。
「なんでだよ!!」
泣き叫ぶような絶叫がボスフロアの後方から響く。
場の歓声が静まり、全員の視線がそちらへと流れる。
叫び声を上げていたのは、軽装の鎧を纏った細身の男だった。
アスカはその男が誰なのか分からない。エギル率いるディフェンダー隊のメンバーではないことだけは確かだが・・・。
涙で顔をくしゃくしゃに歪め、裏返った声でその男が叫ぶ。
その憎悪の込められた視線の先は―――キリト。
「なんで・・・なんでディアベルさんを見殺しにしたんだ!!」
「見殺し・・・・?」
キリトが低く抑制した声で疑問を口にする。
アスカも意図が読めない。ディアベルが殺されたとき、キリトとアスカは取り巻きの相手をしていたのだから、デ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ