暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン アスカとキリカの物語
アインクラッド編
ビーター
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
だったんだ。あの本を書いた奴だって、元ベータテスターなんだから、ただで全部の情報を教えるわけがなかったんだ」


そこで、アスカの体が自然と前に出た。
さきほどまで感情的に行動してはいけないと考えていたのに、気づいたら足が前に出ていた。

ここで反論を言うことは、まったくもってアスカの益にはならない。
今回のボス戦で身にしみて分かったことだが、ボスは絶対に1人では倒せない。
どれだけプレイヤーとしてのステータス、技術が高くても、いかんともできない圧倒的な差がある。
多くのプレイヤーが一丸となって倒すしかないのだ。

アスカがこれからも戦い続け、ボス戦にも参加しようと思うなら、ここで周りとの人間関係に溝を作るべきではない。不穏分子として叩かれたら、下手すると大規模パーティーのボス戦に混じることができなくなる。
それだけならまだしも、最悪、自分までベータテスターだと糾弾されて、キリトと同じ境遇に置かれる恐れがある。そうなってしまえば、今後自分がどうなるかなど想像もできない。

だから、ここは自分と同じくソロプレイヤーとして生きてきたキリトのことは放っておくべきだ。

偶然、迷宮区の最奥にて出会ってから、成り行きでパーティーメンバーになっただけの奴だ。お互い協力関係にあるというだけ。
これまでのアスカの信条なら、利己的に行動して、ここは後ろで場の様子を眺めているだけでいい。キリトがどのように糾弾されようと、無干渉でいればいい。

だが、一度歩み始めた足は止まろうとしない。止まろうとも考えていない。
アスカは自分が自分であるためにここまで来た。戦ってきた。
ならば、ここで動こうとしている自分を止めるわけにはいかない。
たとえ行動の代償として、この先攻略に参加できなくなろうと。


アスカの横から、エギルも歩み出す。この男は正義感のかなり強い男のようだ。
エギルと2人並び、キリトを糾弾していたディアベル率いる隊にいた細身の男と、E隊の男の前に立つ。
そして、言葉を発しようと大きく息を吸い込んだその時、
不意に肩に手を掛けられる。エギルも同様だ。
振り向いた先にいたのは―――たった今糾弾されている張本人、キリト。
女であると隠すために目深に被ったフードのせいで、表情は確認できない。だが、下から覗いてる口元は穏やかな微笑を浮かべていた。
この緊迫した場面であまりにも不釣り合いなその笑みに、発しようとしていた言葉が霧散する。

アスカとエギルの前に押し出たキリトは、女であることを隠すために極力低い声で告げる。

「元ベータテスター、だって?・・・俺を、あんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」
「な・・・なんだと・・・?」

呆然と聞き返すE隊の男。
アスカもキリトの話の意図が読めない。全員の視
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ