暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン18 もうひとりのエンターテイナー
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いるように左右、そしてガラス越しの店の外にまで視線を飛ばす一本松。全方位を確認してもまだ警戒は続いているのか、身をかがめて口元に手をやり、囁くようにしてようやく重い口を開いた。

「そしてもうひとつ、これは多分デュエルポリスもまだ知らない話のはずだ。ミーは今、流通関連で働いて生活してるんだがな?最近、同業者の間で妙な話が出回っているんだよ。曰く、べらぼうに高い礼金で大して重くもない荷物を運ばせたがっている怪しい客があちこちの運送会社、時には個人にまで掛け合ってる、なんてね。それもいわゆる裏ルート、公には出さないようにとのお話ときたもんだ」
「それで、その話がどのようにこの件と?」
「まあまあ、物事には順番ってもんがあるんでね。それで、ミーはまだその話を振られたことはない。ないが、実際に金に釣られてそのブツを運んだって奴の話を聞く機会があった。かなり念入りに口止めされていたらしいが、彼はその時ひどく酔っぱらっていてね。つまり、その分だけ口が軽くなっていたわけだ。なんでもそのブツの行き先はここ、日本の家紋町。しかも、何が何でも今週末までに、とキツくお達しがあったらしい」
「今週末……デュエルフェスティバル開催日、ですね」

 すべての話を横で聞いていた少女が、小さく漏らす。指摘されるまでもなく、それは2人のデュエルポリスも真っ先に結びつけた点だ。デュエルフェスティバルはデュエルポリスの主催イベント、何か起きようものならばその影響は決して小さくない。
 訪れた沈黙に、だろう?と言わんばかりにオーバーリアクションで肩をすくめた一本松が、また声を潜めて話を再開する。

「実を言うと、ミーがこの話をユーたちに伝えた時点でミーがここに来た意味はほとんど終わってるんだ。だけど不幸なことに、ミーがその運び屋と一緒に飲んだことはかなり大勢が見ている。そのすぐ後に仕事を休んでまでここに来たんだ、わかるだろう?」
「なるほどなあ。つまり出場したいなんてのは単なるブラフ、アタシらに今の話を持ってくるための表向きの隠れ蓑、ってことか」

 真面目な話に復活した糸巻が目を細め、噛みしめるように確認する。こうしている間にも、彼女の頭の中ではいくつもの可能性と今後の展望が目まぐるしく浮かんでは消えていた。まず、この話に信じる価値はあるのか……しかし、それは考えるまでもない。もし本当だった場合の被害を考えれば、たとえ真っ赤な嘘だったとしても信じないという選択肢は存在しないからだ。そして彼自身の安全も考慮するならば、この出場申請を蹴るのはリスクが高いだろう。
 ややあって、同じ結論に至ったらしい鼓が小さく頷いた。

「わかりました。では出場の申請、こちらの方で調整しておきます」
「オーゥ、ベリーベリーセンキュー!あのデュエルフェスティバルに出場とあれば、ミーも鼻
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