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TARI TARI +TARA
飛び出したり 誘ったり 飛びかかったら その3
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今更になっていじめなどという行為を始めることもおかしい。
尚更謎が深まっていく中で、その張本人がやって来た。

「ご、ごめんなさい! お怪我はありませんか?」

そう言いながら、片足でぴょんぴょん跳ねながら駆け寄って来たのは、これまた衛太郎と同い年くらいに見える少年だ。焦りと心配の混じった目つきからは、穏やかそうな印象がある。
しかし、衛太郎はその少年にひとつの疑問を持つ。上履きを飛ばして来たこともそうなのだが、疑問を持ったのはその少年の服装にあった。
上履き飛ばしの犯人が来ていたのは、黒い夏用のジャケットにグレーのパンツ。
言わずとも白浜坂高校の制服ではないし、この学校は私服登校を許可してもいない。
つまりこの少年は、校外からやって来た人物だということになる。

「だ、大丈夫です。あの、これ……」

とりあえず落ちた上履きを拾って手渡すと、少年は少し申し訳なさそうに受け取った。
そのままそれに片足を通すと、今度はすっと頭を下げられる。

「本当に申し訳ありません。こちらの不注意のせいで……」

「い、いいえ、たいした事ないんで……これくらい気にしないでください」

ここまで謝られるとなんだか自分も悪い事をしているような気分になって、うっかりこちらも謝りそうになってしまう。
少年がようやく頭を上げても、衛太郎の中にある危うさはまだ消えなかった。

「そ、それじゃ俺はこれで……」

頭部に上履きをぶつけられるという突拍子もない出来事だけで、周囲の行き交う生徒からの視線を総じて横取りしてしまっている状態にあるのだ。そのうえ、初対面の人間と話すことも苦手な衛太郎としては、早くこの場を立ち去りたいという思いが体現された言葉だった。
返事を聞く前に、廊下を見るようにしてその場から小走りで去ろうとする。
その先の階段を登る直前に、横目でさっきまでいた場所を確認する。
もうあの少年もどこかにいなくなっただろう。
そう思ったのが、いけなかったのかもしれない。
さっきの少年はまだいた。
こちらに背を向けて、人に当たらないよう考慮したのか今度は壁に向かって片足を上げている。その浮かんだつま先には、先ほど衛太郎が返した上履きが脱ぎかけの状態でぶら下がっていた。
そのまま少年はその足を上下に振りーー

「よっ、と」

ーー下駄で行う天気占いのごとく、上履きを飛ばした。
弧の放物線を描き、ぺしゃん、と靴底を上に向けて廊下に落ちる。

「……は?」

歩みを進める足を止めて、いつのまにかそんな言葉が出てしまっていた。
異様な光景に怪訝な視線を向ける生徒たちを意に介した様子もなく、少年は落ちた上履きのつま先の向いている方向、背後を確認する。
そして、何か納得したかのように頷くと、上履きを履き直して後方へ
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