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TARI TARI +TARA
飛び出したり 誘ったり 飛びかかったら その3
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び込んだ。
周囲からの見解を考えれば、勇気ある行動だと言えるだろう。

「そっか。まあ合同発表会も近いんだし、頑張れよ」

いちおう労いのつもりで言ってみると、来夏が意外そうに顔を覗き込んで来たので若干のけぞってしまう。

「お? 珍しいね、まだポスターも張り出してないのに知ってるんだ? 発表会があるの」

「まあ、ね……」

本当はその合同発表会に行く予定の邦江から覚えておくようにとさんざん言い聞かされていたからなのだが、これは言わない方がいいのかもしれない。
毎年夏に開かれるこの地区で行われる合同発表会には、各地から多くのゲストが招待される。その中には有名な音楽家や音大の教授も数多くいるので、音楽科の生徒にとっては、将来のための大きなアピールチャンスでもあるのだ。

「それより、はやく行かないで大丈夫か? また教頭にどやされるぞ?」

「うぉっ、そうだった! それじゃ津川、また後でね!」

早口でそう告げて飛び上がったかと思うと、回れ右をして校舎の離れにある体育館へと走って行った。

(やっぱりアイツでも教頭のことは怖いんだなぁ……)

さらに小さくなっていく背中を眺めながら、衛太郎はそんなことを思う。
声楽部の顧問を務める教頭先生は厳しいことで有名だ。だから未だに独身なんじゃないだろうか、とか考えたら眉根にシワを寄せてこちらを睨みつけて来る教頭の顔が頭の中に浮かんでしまい、細かく身震いする。
結局のところ、教頭のことが苦手なのは来夏だけではないようだ。情けない、と感じながらも、仕方ないという諦めも入り混じった複雑な感情が胸に溜まり込んでいた。

「……教室行くかな」

小さなため息を一つつくと、今度こそ下足室に入った。
いつものように靴から上履きに履き替えて、ようやくといった風に廊下を歩き始める。
今日の一時間目にある数学の宿題が、昨日から机の引き出しに仕舞いっぱなしだったことを思い出して、HRが始まる前に片付けておこうとげんなりした。
そのせいだったのだろうか。曲がり角の先から飛来して来る『それ』に、衛太郎は気がつくことができなかった。

−−べしっ!

「おわぁっ!?」

見事こめかみに直撃した『それ』は、まるでゴム玉のように地肌にへばりついてそこからボトッと床に落下する。
何が起こった、と考えながら妙な残留感の残る頭を押さえた手の隙間から、その突然の飛来物を確認する。
それは最近となってはほとんど見慣れなかった、真新しい上履きだった。どうやら、さっきのゴム質の感触は靴底にある滑り止めのものだったようだ。
だが問題はそこではない。一体誰が、なぜ、上履きなど飛ばして来たのだろうかが重要だ。
一瞬いじめの類かと思ったが、昨日までそんな気配はまったく感じなかった。というか、
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