第1部
ロマリア〜シャンパーニの塔
王様の頼み事その二
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ることはめったにないのに、ノアニールに訪れる人間など、もってのほかだ。
なので、ノアニールがどんな村で、今どういう状況になっているのか、ほとんど情報が入って来ないのである。
「でも何年も連絡が取れないなんて……」
「だったら直接そこに行けばいいんじゃねーの?」
オニオンスープを一気飲みしているナギがあっけらかんと言う。私は首を横に振った。
「この辺りは北に行けば行くほど魔物も強いんだよ。カザーブみたいな田舎で戦える人って言ったらせいぜい村の自警団ぐらいしかいないし。かといってロマリアの兵士たちがノアニールに派遣させるには距離が遠すぎるし、そもそも長旅に慣れてる兵士がいないからなかなか実行できないみたいだよ」
「そうそう。その上最近じゃ魔王がさらに強い魔物を放ってるとかって不気味な噂聞いちまうし、ノアニールにも何かあるんじゃないかと思ってね。実家のカザーブはノアニールにそう遠くないし、ちょっと心配になっちまってさ。ところであんた、カザーブのこと良く知ってるね。カザーブに行ったことがあるのかい?」
「実は私、カザーブ出身なんです」
まあ、と女将さんは嬉しそうに驚いた。女将さんもカザーブからこの町に引っ越してきたらしく、カザーブの実家には今も彼女の親が住んでいるそうだ。
「これも何かの縁なんだろうね。もし里帰りすることがあったら、挨拶でもしていきな。今も村の酒場で働いてるから」
「え! 女将さんのご両親、あそこの酒場で働いてるんですか!?」
思わぬところで同郷の人間に出会った私は、久しぶりの故郷の話題に懐かしさを感じ、いつしか朝食を食べる手を止め、すっかり女将さんと話し込んでしまっていた。
話が落ち着いてきたところで、いつのまにかシーラが食堂にやってきた。そして席に着くなり手付かずの私の朝食を寝ぼけ眼で食べ始める。
「ちょっ、シーラ!! それ私の!!」
だがシーラは寝起きでボーっとしているのか、私の声に耳を傾くことなく黙々とソーセージを食べている。
「せっかくのご飯どきなのに、私のせいで迷惑かけたね。心配しなくても、もう一人分、用意するよ。そこのお兄ちゃん、スープのお代わりはいるかい?」
「いる!!」
食後のデザートを食べようとしたナギはフォークを置き、元気良く返事した。女将さんは笑顔で頷き、厨房に戻っていく。私は自分の分のサラダを口に入れながら、ふとぼんやりと考えていた。
――魔王がさらに強力な魔物を放っている――。
このことをユウリは、知っているのだろうか。
確かに魔王を倒すことが私たちの旅の最優先事項。けれど、その魔王の手によって一つの町に災いが降りかかっている可能性がある。もしそれが間違っていなかったとしたら、助けられるのは勇者であるユウリにしか出来ないのではないだろうか。
だけどその間にも、魔
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