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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第七十四話 虎城防衛線会議
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―あちらの方は独立独歩だからな」

 五将家内だけではなく他省庁もおり、さらに天龍交渉が主要な仕事となるとどうしてもそうなってしまう。元々他省庁の官吏となると同じ家の重臣であっても国家予算枠を争う以上、ただの味方ではない。
「他にも”別の商い”をしている連中も腕っこきを送り込んでいますらかね。
葵君でしたっけ、あの故州の若い子。彼はそちらの伝手を親譲りでもっている、店をまたいだ仕事をやるにはああいう子が一人必要じゃないかな」

「彼らに接触したわけか、今度の大仕事の為に?」

「それだけならいいですけどね。彼の側近なんてあの秘書さんくらいじゃないですか。商売も、彼は英さんの付属物で会ってそれ以上のものではなかったのに
よりによってこの時期に動き出したんですよ」
「何故それを私に?」

「ん〜情報代が欲しいという事でどうでしょ。御宅の懐刀、ウチの厳つい方の爺様が気に入ったみたいでね。くれません?」
「あげないよ」
 互いに苦笑を交わし合う。
「でしょうね――まぁそういう事なので諸々口外法度でお願いします。
報せておきたかったのはこれだけ。
西州も美味いものがたくさんありますが、駒州の飯も龍州の米酒も好きなんですよ――それでは」

払いはこちらで持つよ、と保胤が言う間もなく娑婆の人々に中年男の背は溶け込んでいった。
「――随分と安い情報料だな」本命の”情報料”は”知ってしまったこと”であることはわかっているが。
 こういう時に娑婆の人間は領収書をもらうのだったかな、と思いながら財布を取り出す。
中の銅貨が端数より二つ程足りなかったのが少し気恥ずかしかったことが妙に記憶に残った。


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