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ジンの髪の毛
第四章

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「今は」
「今は?」
「俺の気分でこうもなれるぜ」
 セルジュクに応えて黒い腰までのさらりとした髪の毛にもなってみせた。
「自由にな」
「ジンは姿形を変えられるからか」
「ああ、だからな」
 それでというのだ。
「髪の毛も自由に変えられるんだよ」
「そういうことか」
「そしてな」 
 男はさらに話した。
「髭だってそうなんだよ」
「色も形も変えられるのか」
「そうなんだよ、そこは人間と違うからな」
「成程な」
「俺に聞きたいのかこのことだったのか」
「実は」
 こうジンに答えた。
「ここまで来たんだが」
「何でもない話だな」
「私達にとってはどうかという話であって」
「わざわざか」
「聞きに来たんだな」
「お陰で知ることが出来た」
 セルジュクは微笑んで話した。
「よかったよ」
「本当に何でもないことだけれどな」
「その何でもないことを知って」
 そしてとだ、シードはジンに笑って話した。
「人はよくなっていく、そしてそれが」
「アッラーの思し召しである」
「そういうことなのだ」
「人は凄いな、何も知らなくてもどんどん知っていって」
 そうしてとだ、ジンは自分の前に座った二人に笑いながら話した。
「俺達ジンよりずっと物知りになる」
「全くの無知からか」
「そしてこうしたこともだな」
「知ろうとするものだ」
「そしてそれが人へのか」
「アッラーの思し召しだ」
「まさにアッラーは偉大なり、ならな」
 ジンは二人に干した羊肉に果物、そしてワインを差し出して話した。
「折角だからさっき言った通りにな」
「喜捨か」
「俺は今酒も肉持っているがあんた達は持っていない」
「持ってない者に笑って渡す」
「だからな、どうだい?」
「それなら」
 セルジュクはジンの言葉に頷いた、そうしてだった。
 シードと共にジンと笑顔で飲み食いをした、その後でジンと別れてカイロに戻りそこでジンの髪の毛のことを伝えた。人々はこのことも知ったのだった。些細であるが果たしてどうなのかということを。


ジンの髪の毛   完


                    2019・9・11
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