第一章
[2]次話
渾沌の死
かつて世界には三人の天帝がいてそれぞれ治めていた。
南の地即ち南海の天帝を?といい北の地即ち北海の天帝を惣といい中央の天帝を渾沌といい三人がそれぞれいた。
それぞれ南帝、北帝、中帝と呼ばれていた。南帝と北帝は後に出て来る人間と同じ姿形で服を着ていた。彼等はよく共に会い遊びもした。
その中でだ、南帝は北帝に話した。
「中帝のところに行ったことはあるか」
「いや、ない」
北帝は南帝に答えた。
「一度もな」
「そうか、私もだ」
「貴殿もか」
「中帝に会ったこともない」
それすらもというのだ。
「一度もな」
「それは私もだ」
「そうか、お互いにか」
「中帝の地に入ったことも中帝に会ったこともない」
「一体どの様な場所でどういった者か」
「全くわからないな」
「そうだな」
「では一度あちらに行ってみるか」
自然とこの考えが出て来た。
「そうするか」
「そうだな、言ったのがいい機会だ」
「では一度あちらに行ってな」
「中帝とも会おう」
「そしてどういった者か知ろう」
こう話してだ、二人はすぐに中央の地に入った。そこは彼等が治める地と全く変わらず地面に川や海もあった。
だが人や獣はいない、女?はまだ若く伏義とようやく結ばれたばかりだ。それでまだ大地や川があるだけでいるのは神々だけだった。
南帝はその世界の中に入って共にいる北帝に話した。
「別に変わらないな」
「そうだな」
北帝は南帝の言葉に頷いた。
「我等が治める世界とな」
「特に変わらないな」
「おかしなところはないな」
「これといってな」
「よく治められている」
「平和なものだ」
「ではだ」
北帝は南帝に話した。
「中帝のところに行くか」
「渾沌殿のところにな」
「そうしよう」
今度はと話してだ、そしてだった。
二人は今度は渾沌のところに赴いた、すると渾沌自身が出て来た。その渾沌は服は彼等と同じで髪も身体も同じだったが。
顔はあっても目がなかった、耳も鼻も口も目もだ。
一切なかった、それで二人は驚いて話した。
「貴殿目がないぞ」
「鼻も口もないぞ」
「耳もないぞ」
「それでも大丈夫か」
「いや、心にある目や耳で見えて聞こえている」
渾沌は二人に心から語り掛けた。
「匂いもそこで嗅げる、だからだ」
「問題ないか」
「目や耳がなくとも」
「それでもか」
「私はこれで困ったことはない」
こう言うのだった。
「だから問題ない、それよりもだ」
「それよりも?」
「どうしたのだ」
「貴殿達は南帝と北帝か」
渾沌の方から聞いてきた。
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