第一章
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サームの知らないこと
サームは文字通り無敵の勇者であった、その強さは無双であり誰もがムスリムの中で一番の勇者と認めていた。
どの様な敵も文字通り一撃で倒した、ドラゴンもジンも何もかもだ。
それで彼はスルタンからもよく敵を一撃で倒すことを褒め称えられた、スルタンは長身で逞しい体格を持つ黒髪と黒い瞳それに日に焼けた引き締まった見事な顔立ちの青年に対して言うのだった。
「そなたはあらゆる者を一撃で倒すな」
「同じ相手に太刀を二度振るった記憶がありません」
サームもスルタンに畏まって答えた。
「一切」
「そうだな、ドラゴンもジンもだな」
「これまで数多くの魔物を戦ってきましたが」
それでもというのだ。
「太刀を二度振るったことはです」
「ないな」
「敵の軍勢も賊も」
人間を相手にしている時もというのだ。
「左様です」
「そうだな、グールもだな」
「グールと戦ったこと数知れず」
サームはこの魔物についても述べた。
「その全てをです」
「一太刀でだな」
「倒してきました」
「左様だな、ではだ」
ここまで聞いてだ、スルタンはサームに問うた。
「グールのことは知っているか」
「数えきれないだけ戦ってきただけに」
それ故にと言うのだった。
「グールのこともです」
「そうだな、ではだ」
スルタンはサームのその話を聞いて彼にさらに言った。
「グールが二太刀そして三太刀浴びせると息を吹き返すのは知っているな」
「そうなのですか」
スルタンの今の話にだった、サームは驚きの顔になった。そうしてそのうえでスルタンに対して言うのだった。
「それはまた」
「そのことはか」
「知りませんでした」
スルタンにその顔で答えた。
「これまで」
「そうだったのか」
「グールの習性やその強さの程度はよく知っていましたが」
「グールが二太刀三太刀で息を吹き返すことはか」
「今まで」
「そうだったか、だがな」
スルタンはサームにさらに話した。
「グールはそうなのだ」
「左様ですか」
「そなたはグールも常に一撃で倒してきたからな」
「そのことはです」
どうしてもというのだ。
「知りませんでした」
「そうか、ではこのことはか」
「いい教訓になりました、兵達を率いてグールを成敗する時は」
魔物、人を脅かす彼等を退治する時はというのだ。
「そのことを注意してです」
「兵達に戦う様命じるか」
「そうしてきます」
そうスルタンに答えた、そしてこの時からすぐにだった。
サームはスルタンの命で兵達を率いてグールの征伐に赴いた、ここで彼は兵達に対して言うのだった。
「グールは必ず一太刀で倒せ」
「一太刀ですか」
「それで、ですか」
「倒すのだ
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