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グンラウグの失恋
第一章

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               グンラウグの失恋
 俗に蛇舌グンラウグと呼ばれていた、アイルランドの広大な領地を治める者である黒髪のイッルギの子であり長身と堂々とした姿勢に整った顔立ちと詩人としての才があった。
 だがその口は悪く他人を中傷する悪癖があった為に蛇舌と呼ばれていた、その彼がアイルランドにいた時に聴いた話はというと。
「その様なか」
「そうだ、何でもな」
 グンラウグに友人が話した、二人は共に船から降りて商いの後で飲みつつ話をしているがそこで友人に言われたのだ。
「まだ子供だが」
「それでもか」
「かなりの奇麗さらしいぞ」
「それならな」
 グンラウグは友人の話を聞いて目を輝かせた、それでこう言った。
「一度その娘と会ってだ」
「そうしてだな」
「どうするか決めよう」
 こう言ってだった、グンラウグはそのまだ幼いが驚くまでに美しいというヘルガのいるところに行った、するとだった。
 見事な金髪に海の色の瞳、紅の唇と頬に楚々とした身体とこの世のものとは思えないまでに整った顔立ちの少女がいた、その少女こそ減るがであり。
 グンラウグはすぐに自らの家と名を彼女の父であるソルステインの館まで行き彼女と結ばれたいと述べた、その話を聞き。
 ソルステインは館の主の座からこうグンラウグに答えた。
「貴殿の名は聞いている」
「既にですか」
「そうだ、優れた詩人でありアイルランドで広大な領地を持つイッルギ殿のご子息だとな」
「全てご存知ですか」
「全てな、貴殿は確かに優れた詩人で家柄もとくしかも外見もいい」
 即ち優れたものを多く持っているというのだ。
「剣術のこともな」
「それでは」
「全てと言った、そなたの蛇舌のこともな」
 ここでソルステインは厳しい顔になった、金色の髪の毛と髭それに青い瞳を持つ顔をそうさせたのだった。
「聞いている」
「そのこともですか」
「そなたの中傷癖はよくない、それをなおす為にだ」
 それでと言うのだった。
「暫くこの国からだ」
「他の国をですか」
「船で巡って詩人そして戦士として旅をして」
「己を高めてですか」
「その蛇舌、中傷する悪癖を何とかしてだ」
 そのうえでというのだ。
「ここに戻って来た時にだ」
「ヘルガ殿を」
「そのことを考えよう」
「それでは」
 グンラウグは頷きそうしてだった。
 友人達と共に一旦アイルランドに戻り親達にことの次第を話し旅に出た、彼はイングランドからノルウェーに至りスウェーデンにも入った。その間多くの詩を謡い海や山で賊達とも戦ってきた。そうしてだった。
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