第一章
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アリーの死
この時アリー=イブン=アビー=ターリブはカリフとしてウマイヤ家と戦っていた、ウマイヤ家は三代目のカリフであるウスマーンを出したが暴徒達に殺され彼等はアリーをカリフに選んだのだ。
これにウマイヤ家は反発しアリーへの戦を挑んだ、ここでウマイヤ家を実質的に率いるムアーウィアは一族の者達に言った。
「勝つのは我々だ」
「あのアリー殿にですか」
「そうだ、勝つのはな」
まさにとだ、彼は老獪な風に見える髭を生やした痩せた顔で言うのだった。目は知的だがいささか狡そうに光っていて豹や狐を思わせる。
「我々だ」
「ですがアリー殿はお強いです」
「ムハンマド様が認められたままにです」
「ムスリムで最も強い方です」
「ただご自身の武勇が優れているだけではないです」
それに止まらないというのだ。
「戦の采配もお見事です」
「あの方に勝とうと思いますと」
「そうそうなことではないです」
「ウフドではムハンマド様を助けられ」
「メッカやハンダクでは敵の豪傑を一騎討ちで倒され」
「そしてハイバルの砦を攻め落とされています」
「間違いなくムスリムで最も武勇に優れ采配のよい方です」
つまり戦の場では最強だというのだ。
「その方と戦われるとなると」
「尋常なことではないですが」
「それでもですか」
「我々は勝てますか」
「見るのだ」
ここでムアーウィアはダマスカスの己の宮殿の窓から街の大モスクの外壁を指差した。そうして言うのだった。
「あれを」
「ウスマーン様の衣を」
「それをですか」
「そうだ」
見ればその外壁に血染めの衣があった、暴徒達に殺されたウスマーンの衣だ。
「あれをな」
「あの衣がですね」
「我等を勝たせてくれる」
「そうせくれるのですね」
「そうだ、異教の話だが」
こう前置きしてだ、ムアーウィアは一族の者達にさらに話した。
「カエサルという男が殺された後だ」
「ローマのですね」
「偉大な英雄ですね」
「あの男が殺されて」
「そしてオクタヴィアヌスが跡を継ぎましたね」
「あの時オクタヴィアヌスはカエサルが殺された時に着ていた衣を掲げて演説を行い」
そうしてというのだ。
「大きく支持を集めたな」
「その時と同じですね」
「今の我々は」
「ウスマーン様を殺されましたが」
「それでもですね」
「そうだ、これ以上はないまでのものを得た」
そうだったというのだ。
「あの衣があるからな」
「勝つのは我々ですか」
「ウマイヤ家ですか」
「そうだ、そして大事なのは」
ムアーウィアはさらに言った。
「用心深くあることだ」
「我々はですね」
「そうあるべきですね」
「豹の如く遠回りに狩り」
そしてというのだ。
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