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渦巻く滄海 紅き空 【下】
二十九 怒りの引き金
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してから、彼らを助けに行こうとヤマトは考えていた。

だがそれは、聊か慎重しすぎる考えだった。



多少なりとも、鬼童丸と右近/左近と若干の仲間意識を覚えていたシカマルは難しい表情で森を観察する。
彼らを心配する気持ちはある。だがシカマルの心は、気絶したナルに向いていた。
気を失っている彼女を置いていくことはできない。

ふと、森の上空に飛ぶ白い鳥に眼を留めたシカマルは、眼を凝らした。
ただの鳥にしては大きすぎる気がする。
その鳥の背中に人影が見えた。


「……何故、此処に…?」

鳥に注視していたシカマルの口から驚きの声が零れる。
怪訝な顔をするシカマルに、「どうした?」と訊ねながら、ヤマトは彼の視線の先を追った。


鳥の背に乗って、大蛇丸達がいる森の上空を飛んでいるのは、ダンゾウの部下であり【根】の一員。


「サイ…」
「知り合いか?」

ヤマトの問いに、シカマルは【忍法・超獣偽画】による巨大な鳥に乗るサイから目を離さぬまま、簡潔に答えた。


「ダンゾウの部下っスよ」
「……どういうことだ」


既に【根】からは右近/左近・鬼童丸が派遣されている。
それなのに、何故、またダンゾウの手の者がこの場にいるのか。

大蛇丸だけでも厄介なのに、この上、またダンゾウが絡んでくるとなると、話は更に複雑だ。
顔を顰めたヤマトは、森へ向かわせた己の木分身を遠目で見据えた。


「嫌な予感がする…」




























大木がバラバラに抉られ、削られ、凄まじい風が吹き荒れる。
暴れる大蛇の猛攻に、鬼童丸と右近/左近は防戦一方だった。

迫りくる蛇の大口から垣間見える牙。

大蛇に今にも呑み込まれそうになっていた鬼童丸はチャクラの使い過ぎで、もうあまり余力はなかった。
ふらつく鬼童丸を咄嗟に押しのけ、左近は親指の腹を歯で噛み切る。

凄まじい速度で迫る蛇の手前、左近は勢いよく地面に手を叩きつけた。


「口寄せ───【羅生門】!!」

瞬間、禍々しい鬼の形相が彫られた門が地中からせり上がる。


ただ頑丈なだけでなく弾性にも優れている門は、大蛇の猛攻を食い止めた。
門にぶつかった衝撃で、カブトが蛇の頭から落ちる。
空中で体勢を整え、軽やかに着地したカブトを視界の端で認めながら、大蛇丸は「ふぅん…?」と聊か感心めいた声音で呟いた。


「右近と左近、二人がかりじゃないと口寄せできなかったのにねぇ…」


以前は右近/左近が二人同時に口寄せしないと発動しなかった【羅生門】。
その門を、左近ひとりで口寄せした事実に、大蛇丸は眼を細めた。



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