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占術師速水丈太郎  死の神父
第十六章
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「神々しいですね」
「ええ、よく手入れもされていてね」
「そうした場所に見えます」
「そうね、けれどね」
「はい、私の言いたいことはです」
「わかっているわ、神々しいのは外見だけよ」
 あくまでそこだけのことだというのだ。
「その実はね」
「恐ろしい邪悪があります」
「それに満ちているわね」
「はい」
 まさにというのだ。
「そうした場所です」
「そうね、ではね」
「その邪悪な中にです」
 これよりというのだ。
「入り」
「そのうえで」
「邪悪を滅ぼしましょう」
「私は悪は否定しないわ。けれどね」
 妖艶な笑みに凄惨なものを含ませてだ、紗耶香は述べた。
「ああしたおぞましい悪は嫌いなのよ」
「そうですね、貴女は」
「悪も、いえ悪だからこそ美しくあれ」
 こう言うのだった。
「そう思うわ」
「左様ですね」
「もっとも私は自分は悪とは思っていないわ」
「堕ちていますね」
「そうよ、魔の道色の道に堕ちているのよ」
 まるでそれを心から楽しんでいる、そうした様な笑みでの言葉だった。
「私はね」
「それを悪と呼ぶか」
「違うわね、それは」
「そうですね、それは決して悪ではない」
「悪は美しくあれ、されどね」
「魔と色はですね」
「より美しくあれよ」
 これが紗耶香の言葉だった。
「そう考えているわ、では今からね」
「おぞましき邪悪を」
「滅ぼしにいくわ」
「私もまた。それでは」
「力を合わせるのは久しぶりだけれど」
「ここは共に参りましょう」
 速水は沙耶香の妖艶な白の中に黒と紅がある美貌を右目で見つつ微笑んだ、そうして聖堂に足を踏み入れた。するとだった。
 すぐに聖堂の庭、墓場になっており無数の墓標が立っているそこから腐り果てた、腐りかけのものも骨もある無数の骸達が出てきた。速水はその骸達が皆女のもの、骨格もそれであることからわかるそれ等を見て述べた。
「この方々は間違いなく」
「ええ、神父に生贄にされた娘達ね」
 紗耶香は身構えつつ速水の言葉に応えた。
「埋葬はしたけれど」
「こうした時に備えてですね」
「人形にしていたのね」
「何ということを」
 二人に同行していた司祭はこれ以上はないまでに顔を顰めさせて言った。
「悪魔への生贄にし尚もこの様なことをするとは」
「これは許せませんね」
 速水は一枚のカードを出しつつ司祭に応えた。
「到底」
「はい、ここは何とかしなければ」
「今より苦しむ乙女達を救います」
 速水は司祭に再び応えた、それも確かな声で。
「こうして」
「あの力を使うのね」
「はい、苦しみ悲しむ魂を救うにはこれが一番です」 
 紗耶香にも応えてだった、速水は出しているカードを自身の顔の前で右から左にやった。見ればそのカード
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