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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十八話 余波(その4)
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ュン少将だ」
チュン少将が俺の方をチラリと見た。認識はしたのだろうが先ずはゼノ艦長の報告を受けようというのだろう。視線をゼノ艦長に戻している。

「ヴァレンシュタイン提督を当艦にお迎えしました」
「そうか、何か問題は有るかな」
「小官の知る限りにおいては有りません」
「うむ、御苦労だった、ゼノ艦長。ではヴァレンシュタイン提督に代わってもらえるかな」
チュン少将が満足そうに頷くとゼノ艦長がホッとした様な表情を見せた。

互いに敬礼するとチュン参謀長が話しかけてきた。
「御無事で何よりです、ヴァレンシュタイン提督」
「心配をかけたようですが、この通り無事です」
俺の周囲で苦笑する音が聞こえた。ローゼンリッターだな、悪い奴だ。後で御仕置きをしないと。

「余り無茶をされては困ります。我々の艦隊は第一特設艦隊なのです、常設の艦隊ではありません。閣下にもしものことがあればどうなるか……。これまでの訓練が全て無意味なものになりかねません」
「……」

参謀長が心配そうな顔をしている。なるほど、確かにそうだな。場合によっては解体という事も有り得る。それは避けたいだろうな、二万隻の艦隊の司令部要員ってのはやはり周囲からは羨望の的だろうし、やりがいも有るはずだ。本来なら俺を怒鳴りつけたい気分だろう。

「以後はお立場を考え、今回のような無茶はなさらないでください」
「分かりました、気を付けます」
素直に答えるとチュン参謀長は満足そうに頷いた。そうか、ゼノ中佐が嬉しそうなのも艦隊が解体されずに済むと思ったからかもしれない。俺ならこんな死亡率が高そうな艦隊に居るのは嫌だけどな。

「巡航艦パルマがこちらと合流するにはあと一週間ほどかかると思います。おそらくはポレビト星系付近での合流になるでしょう」
「……」
ちょうどいい、色々と考える必要が有る。ハトホルでは一人で考えるなんてなかなか時間が取れないからな。

「合流するまでの間、油断は出来ません。くれぐれも無茶をなさらないでください」
「参謀長の言うとおりにしますよ」
俺の返事に参謀長はゼノ艦長の方に視線を向けた。
「ゼノ艦長、必ず提督を我々に送り届けるのだ。巡航艦パルマの指揮権は貴官にあることを忘れないように」
「はっ」
俺、あんまり信用されていないな、何でだろう……。多分周りにいる人間が悪いんだな。きっとそうに違いない。俺の所為じゃないさ……。





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