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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十八話 余波(その4)
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事を言っている状況じゃないとも思うんだが……。
「控えめに言っても深刻と言って良い状況だろうな。表では今も地球教団と憲兵隊が撃ち合っている。昨日まではちょっと変わったところは有るが善良な市民だと思っていた地球教徒が実は破壊工作員だと分かったんだ。もちろん全ての教徒が破壊工作員という訳ではないだろうが、見極めが難しい。うちの人間は皆頭を抱えている」
「……」
「……フェザーン方面で何らかの行動を起こす。おそらくはフェザーンを独立させる、或いはそう見せかけて帝国軍を混乱させる、そんなところだろうとは思ったが、まさかこんなことになるとは思わなかった。とんでもない事になったよ」
「本当にそう思っているのか?」
いかんな、ザックス。それじゃこっちを探りに来たのがバレバレだぞ。
「本当だ、そんな疑い深い目で見るな、ザックス。大体シトレ元帥も何処まで知っていたのか疑問だな……。もし地球教の事を事前に知っていたのなら防諜課に対して何らかの指示が出ていてもおかしくない、そうじゃないか」
「出ていないのか?」
「言っただろう、皆頭を抱えていると」
俺の言葉にザックスはホッとしたような表情を見せた。やれやれだな、シトレ元帥が何処まで知っているのか、本人には確認できんからな。まあこれだけでも十分な収穫だろう。
「調査課に戻ったらどうだ」
「……」
「御土産は十分に渡したはずだ。これ以上の事が知りたいならヴァレンシュタイン中将に直接訊く事だな。もっとも訊けるのならだが……」
ムッとするかと思ったがザックス中佐は苦笑して頷いた。
「気を付けろよ、バグダッシュ。調査課にはお前がヴァレンシュタイン中将と組んで調査課を出し抜いたんじゃないかと疑っている人間が居る」
「……」
「嘘じゃないぞ。先日、俺がお前と話していたことで俺が本当は知っていたんじゃないかと疑っている奴さえいる始末だ」
「……それで此処に怒鳴り込んできたのか」
ザックスが頷いた、もう笑ってはいない。
「それだけじゃない、お前は嫉まれているんだ、出世したからな。お前を凹ませたいと考えている連中がいる。調査課だけじゃないぞ、防諜課にもいる。今回の一件にお前が絡んでいるという情報も防諜課から調査課に流れた可能性が有る」
「まさか……」
ザックスが肩を竦めた。
「お前がヴァレンシュタイン中将と親しい事に目を付けた連中がいる。中将の動きを補足するためにお前を監視している連中がいるんだ。連中の情報源はお前を快く思っていない防諜課の人間だ。思い当たる節は有るだろう」
「……」
無いとは言えない。階級が上がった事で今の地位に就いたことは事実だ。本来なら俺の代わりに係長になっていたかもしれない人間も何人かいる……。俺が監視対象か……。ゾクッとするものが背中を
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