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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十八話 余波(その4)
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くれなかった。分かっていたんだろう、フェザーンで何か動きがあると……。俺達がどれほどヴァレンシュタイン中将の動きに注目しているか知らなかったとでも言うつもりか?」
そんな恨みがましい目で見るなよ、ザックス。後で酒の一杯も奢る必要があるな、或いは殴り合いか……。殴り合いの方が後腐れ無さそうだ。五、六発、いや二、三発多めに殴られれば良いか……。こいつとの殴り合いは士官学校以来だが、懐かしいとは言えないだろうな。
「知っていたさ、だからと言ってペラペラ喋れると思うか? ヴィオラ大佐との繋ぎはシトレ元帥直々の依頼によるものだ。そこから先は極秘だと言われ何も聞かされていない。例え俺とお前の仲でも喋れる様な事じゃない、違うか? お前が俺だったらどうする、喋ったか?」
「……」
ザックスは無言で俺を睨んでいる。理解は出来ても納得は出来ない、そんな感じだな。時間が経てば納得するだろう。
「ザックス、調査課はヴァレンシュタイン中将の動きに何も気付いていなかったのか?」
ザックスがきつい目で俺を睨んだ。済まないな、ザックス。しかし調査課がどういう状況に有るかを知るのも俺達の仕事でな。悪く思わないでくれよ、せっかく防諜課に来てもらったんだ、土産一つ貰わずにお前を帰すことは出来ない……。
「気付かなかった。艦隊司令官になって訓練に出ているからな、当分動きは無いものと思っていた。甘かったよ……、まさかフェザーンとは……」
確かに甘かった。訓練というのを真に受け過ぎたのだろう。動くとすれば出撃の前後と見たか……。残念だな、ヴァレンシュタイン中将を知ろうとするなら動きの有る時より動きの無い時を注視すべきだ。動いてからでは遅すぎる……。
「それで、調査課はどう見ているんだ、あれを」
俺の言葉にザックスが視線を逸らした。答えたくない、いや答えられないと言ったところか……。どうやら調査課ではまだ意見がまとまっていないらしい。となるとザックスがここに来たのは……。
「お前はどう思うんだ、ザックス」
「……ある程度、いや、かなりの部分が真実なのだと思う。俺の周囲にはそう考える人間が多い。だとすると厄介な事になると思う、形の無い敵を相手にする事になる。……防諜課は如何なんだ」
ザックスがちらりと俺を見た。今度はそちらが御土産を仕入れる番という事だな。なるほど、目的はむしろこちらか……。ザックスはこっちが、いや俺が情報を持っていると見た。それを入手するために敢えて怒っている振りをしたか……。ザックス、まさかお前と駆け引きをする事になるとはな、やれやれだ。
いや、怒っているのは本当かもしれんが、それだけではないという事だな。素直に頭を下げて教えて下さいとは言えんか。ザックスはともかく、調査課にも面子が有るからな。まあ分からないでもないが、そんな
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