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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第七十二話 龍塞の裏で糸を紡ぐ
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悪だ」
 父の唸るような波に対して平静な波で次男坊は返答した。
「関わるのなら〈帝国〉が〈皇国〉鎮定を諦める程度に‥‥という事ですね、兄上と相談するべきかな
‥‥新城殿は〈皇国〉内部でも動いているようです、私は彼が逃れた後の事を考えるべきでしょうね」

 おいおい、仕切りは俺だぜ、と小吉は拗ねたように蜷局を撒きなおした。
「幸い、”可能な限り好意的に解釈できる範囲で”協力する、という点では現在も一致しているがなぁ、問題はその後だ。
俺達が肩入れしたとして〈皇国〉の内部も怪しい、情勢が変われば我らとの約定が反故になるようでは話にならねぇよ、俺達が肩入れするとしても自己犠牲じゃねぇ、俺達の孫やら、ひ孫やらが生きるか死ぬかよりも多少は気楽な議論を政議堂でやる為だよ」

 父らしい捻くれた言い回しに笑いながら観戦武官らしく蜷局を引き結び、首を上げて波を発した
「小官も新城殿の傍で状況を子細に把握できるようにしましょう――実際、彼の周りの動きを把握すれば兄上の集めた情報とすり合わせれば全体が見えるはずです」

「あぁお前の友人か。‥‥そうだな、統領議会で貴様にも観戦武官として報告をしてもらわないとならねぇ。後は風向き次第だ、戦争と世論のな」
 お前の友人が無事に〈皇国〉に戻らなければ、とは口にしなかった。父としての情なのか、当たり前のように自分の息子がそれを信じているからか、統領を退いてなお、変わらず政議堂で一目置かれている坂東小吉をして判断がつかなかった




皇紀五百六十八年 九月十二日 午後第十刻 龍上国天竜自治領龍虎湾沿岸 人間居住地域
天龍自治国 〈皇国〉利益代表部 二等書記官 弓月葵

 ――父上、母上、姉上、碧。みな元気にしているでしょうか。私はこの度、気が付いたら局長になっていました。入って二年で局長!!皆驚くでしょう‥‥避難所の事務局長を外務官僚である僕がなぜかやる羽目になっているのですから‥‥。

 などと昨夜、涙を流しながら書いたのも記憶に新しく、いやいや昨夜だから実際新しいのだけど。

「弓月局長、施設の増築を予定しておりますが、龍下さん達はどの程度こちらに残る予定ですかね? 」
 古くからこの自治領に住む大工の棟梁――人間だ、もちろん。
「若様ぁ、船便の増加と酒と食料の輸入手続きについてですが‥‥」
 故州の廻船商人が顔を出した。若様じゃないってば、といいたいところだが付き合いも長く義損金やらあれこれと手を回してくれているので強く言えないのだ。
「局長、大工たちへの支払いについてですが‥‥」
 層かと思えば金の工面に頭を悩ませている財政屋の職員が景気の悪い顔で二十も若い時分にすがるようにやってきた。
「あーもう!!逗留期間については皇都の受け入れ態勢の調整中!少なくともあと一月!
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