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占術師速水丈太郎  死の神父
第九章
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「貴方をここで放っておく訳にはいきません」
「だからですか」
「今のは貴方の様な相手にはよくて牽制」
「ではですね」
「本気の攻撃でしたが切り札ではありません」
 言うならばボクシングで言うジャブだったというのだ。
「切り札は多くあります、ご安心を」
「それでは」
「はい、ここは」
 こう言ってだった、小アルカナのカード達を構えたまま。
「貴方は私に勝つことを考える必要はありません」
「では何を考えればいいと」
「最後の審判で裁判官にどういった裁きを受けるのか」
 それをというのだ。
「お考えになることです」
「そう言われますか」
「ではお覚悟を」
 再び小アルカナの数枚のカードを投げた、しかしそれはあくまで牽制だった。そしてその牽制をつなぎとして。
 そこからだ、もう片方左手に持っていた力のカードを出した。そのカードから猛々しい獅子を出してだった。
 前に突進させた、獅子が何かを噛むと。
 そこに漆黒の司教の服を着た初老の男が現れた、面長で窪んだ青いまるで死んだ魚の様な下に深いクマがある目にやけに薄く血の気のない唇灰色が混ざった長い黒髪に青白い肌で背は普通位で痩せた身体をしている。
 その彼がだ、獅子に右肩を噛まれつつも不気味なぞっとする様な笑みを浮かべて言ってきた。
「力の象徴獅子ですか」
「はい」
 その通りという返事だった。
「それを出させてもらいました」
「成程、この力でですか」
「はい、私はです」
 まさにと言うのだった。
「貴方を攻めます」
「そうですか」
「貴方にこれまでの罪を償わさせる為に」
「罪、ですか」
 その言葉を聞いてだった、その男は。
「この私アンドレオ=エマヌッティにですね」
「償わせます、多くの女性を生贄にした罪を」
「それが何の罪になるのか」
 罪の意識、それを全く感じるところがないのが手に取る様にわかる返事だった。実際に彼はそうしたものは全くなかった。
「わからないですね」
「そう言われますか」
「私は仕えているあの方の為に」
 その青いそれでいて生気も人間味もなく死んだ魚の様な目に異様な妖気に満ちた光を宿らせて言うのだった。
「供えただけだというのに」
「それは」
「はい、そして」
 そのうえでというのだ。
「罪ではないのですよ」
「そうしたお考えですか」
「何か間違いが」
「誰であろうと命を弄ぶことは許されない」
 速水は二枚目のカードを出した、それは塔のカードだった。高い塔が雷により砕かれ人々が落ちる姿が描かれている。
「そのことをご存知ない様で。では」
「力の獅子で私の動きを止めてですか」
「この塔の力で」
 まさにとだ、速水はその塔のカードを前に突き出しその力を解放しようとした。だがその時にであった。
 
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