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占術師速水丈太郎  死の神父
第四章
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「倒さなければ、魔道に堕ちたなら人の身体を持ちながらも」
「その心がですね」
「人のものとなくなりますので」
 速水はこれまで多くの裏の仕事をしてきてそうしたこともわかる様になっていた、それで司教にも話すのだ。青い空の下青い海の上にいるが彼の気持ちは決して澄んでいるものでも明るいものでもなかった。
「ですから」
「それで、ですね」
「倒さなければなりません」
「絶対に」
「そうです、ですから」
 それ故にというのだ。
「私は引き受け引き受けたなら」
「必ずですね」
「倒します」
 つまり仕事を果たすというのだ。
「ですからお任せ下さい」
「そう言って頂いて何よりです、世界に数多くの退魔をされる方はおられても」
「この度はですか」
「猊下もと言われまして」
「猊下ですか」
「法皇猊下が」
 猊下といっても二つある、枢機卿への敬称として他ならぬローマ教皇への敬称の場合と二つがあるのだ。
 それでだ、司教はこの度は法皇即ち教皇だと言ったのだ。
「貴方なら間違いないと言われて」
「そうしてですか」
「この度のお話が出た時にすぐにです」
「私の名前をですか」
「猊下がすぐに言われました」
「驚きです、私のことを法皇猊下がご存知とは」
「貴方はこちらの世界では非常によく知られていますので」
 それこそローマ教皇が知っているまでにというのだ。
「依頼された退魔の仕事で失敗したことはなく」
「必ず成功して果たすとですか」
「そう言われていますので」
 それ故にというのだ。
「有名になっていまして」
「それで、ですか」
「猊下も仰られたのです」
「そうですか、それではそのお気持ちを受け取って」
 そのうえでとだ、速水は司教に微笑んで答えた。
「是非共です」
「仕事を果たしてくれますね」
「そうさせて頂きます、まずは」
「敵のことをですね」
「詳しく知りたいですが」
 これまで速水自身も調べてはいる、だが彼にしてはある程度でしかなく彼が言うには詳しくというのである。
「バチカンで知っている限りのことを教えて頂けるでしょうか」
「喜んで」
 これが司教の返事だった。
「そうさせて頂きます」
「それでは」
 速水は司教の返事に応えてだ、そのうえでだった。
 速水の為に用意されたクロアチアの港町リエーカの中でも最も豪奢なホテルの一室でその神父のことを聞いた、その神父についての個人情報も含めたファイルも読んでだった。
 彼は真剣な顔でテーブルの自分の席の向かい側に座っている司教に言った。
「私が調べてきた様に」
「この人物はですね」
「姿形は人間ですが」
 このことは事実であるがというのだ。
「しかしです」
「あくまで人間であるのはそれだけで」
「心は悪魔になっています
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