第三章
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部活を終えてこの日は塾がなかった兄に尋ねた。
「落ち着いた?」
「聞きたいか?」
兄はリビングに制服のままで入って来た妹に言葉を返した。
「話せば長いよ」
「一言で」
「地獄に落ちろ巨人」
寿は本当に一言で答えた。
「これでいいか」
「いいわ、それで心からわかったから」
「今シーズンの気持ちだよ」
「今年は例年に増して酷かったって思う?」
「カープに負けるのはいいんだよ」
そのカープファンの千佳に述べた。
「ノーヒットノーラン喰らってもな」
「今年もマモノとケンタッキーのおっさんに愛されてるわね」
「その二つの名前も出すなよ」
寿は制服を脱ぎつつ言った、制服の下は黒と黄色のシャツだ。まさに虎だ。見れば千佳も服の色は上下共赤で見事な鯉だ。
「来年も元気だったらどうするんだ」
「毎年元気でしょ」
「だから言うなよ、とにかくな」
「カープに負けるのはいいの」
「他のチームにもな、交流戦にも」
そこで負けてもというのだ。
「いいんだよ」
「そうよね、お兄ちゃんは」
「けれどな」
「巨人に負けることは」
「全く、僕は巨人に勝つのを見る為に甲子園に行ったんだよ」
今シーズンもとだ、寿は制服のズボンを脱いで黒と黄色の縦縞のトランクスの上にやはり黒と黄色のジャージを穿いてさらに言った。
「それがな」
「何度も三連敗してね」
「ここで三連勝したら巨人はまずいって時にな」
「いつもだったわね」
「これじゃあ阪神は巨人の味方だろ」
「あえて言わないわね」
言えば兄が切れることは確実だからだ、千佳は自分もそうなることがわかっているからここは止めた。
「そこは」
「そうしてくれるか」
「そうするわね」
「悪いな、じゃあ僕が言うけれどな」
「今年はっていうのね」
「ふざけるなだよ」
本気で怒っている言葉だった。
「全く以て」
「そのせいで今年成績よかったのよね」
「勉強も部活もな」
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