第五章
[8]前話
「言うまでもなくな」
「お魚よね」
「お前肉のサラブレッドって言ってな」
「お魚食べないとは言ってないでしょ」
やはり悪びれない。
「そうでしょ」
「そう言うのかよ」
「事実だからいいでしょ、大体ね」
安奈はここで攻勢に出た、それで言うのだった。
「ハンバーガーでもフィッシュバーガーあるでしょ」
「フライのか」
「ステーキハウスでもムニエルあるし」
こうした料理を挙げていくのだった。
「カルパッチョだってあるでしょ」
「カルパッチョは居酒屋とかだろ」
「従姉のお姉ちゃん居酒屋で働いてるのよ」
「だからいいっていうのか」
「そうよ、また言うけれどね」
「魚食わないとは言ってないっていうんだな」
「嫌いとも駄目とも言ってないわよ」
こうしたことは一切というのだ。
「そうでしょ、言ったことある?」
「そういえばないな」
「だからいいでしょ」
「本当に見事に開き直ったな」
周五郎も思わず唸る程だった。
「本当に」
「事実だからね」
「よく言うものだよ」
「それに沢山食べたからいいでしょ」
安奈は今度は昨日店で食べた皿の数をした。
「そうでしょ」
「四十皿な」
「私が十皿でね」
「お兄さんが三十皿か」
「そうよ、食べたからいいでしょ」
「店員としてはか」
「それでいいでしょ」
こう言うのだった、やはり悪びれず。
「そういうことでね」
「そう言うとな」
「またそっちのお店に食べに行くし」
「たらふく食えよ」
もう周五郎はこう言うだけだった、後は学校の授業の話をした。そして安奈がまた店に来た時に店員として接するのだった。
肉女の正体 完
2019・10・20
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