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網切り
第三章

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「あと出ないと思ったりいないと思ったらな」
「そうした時にですね」
「出るからな」
 そうしたものだからだというのだ。
「もう出ないさ」
「そうですか」
「暫くな、俺が忘れるまで」
 網切り、その存在をだ。
「その時までな」
「じゃあ切られた分は」
「今作ってるからな」
「完成したらですね」
「すぐに送るな、それでいいな」
「わかりました」
 美琴は頷いた、そしてだった。
 雄太郎と共に権田の自宅兼仕事場を後にした、だがその時にだった。
 彼の家の玄関を出た時に宙に烏天狗の様な顔をしてなめくじと虫を合わせた様な十五センチ程の身体にだった。
 ザリガニの様な鋏があるものが彼方に飛んでいっているのが見えた、美琴はそれを見て一緒に見た雄太郎に話した。
「まさかと思うけれど」
「あれ絶対に普通の動物じゃないですよね」
「妖怪よね」
「鋏ありましたから」
「あの鋏でね」
「職人さんのお家の方から飛んできましたし」
「網切り?」
 それではないかとだ、美琴は言った。
「やっぱり」
「そう思うのが普通ですよね」
「そうよね、それじゃあ」
「あの妖怪がですね」
「網切ったのね」
「そうみたいですね」
「何ていうか」
 まさにとだ、雄太郎はこうも言った。
「僕達が話をしたら」
「その時点で去るとかね」
「本当に妖怪らしいですね」
「そうよね」
「まあとにかくですね」
「あの妖怪に切られた分はね」
「作ってくれますし」
 権田が約束してくれたのでというのだ。
「ですから」
「それを待てばいいわね」
「はい、じゃあ僕達は」
「今日はこれで終わりね」
「また明日ですね」
「いや、喉が渇いたわ」
 今日のやるべきことが終わったと思ってだ、美琴は言った。
「それでね」
「お酒ですか」
「飲まない?福島の方にもいいお店知ってるのよ」
「居酒屋ですね」
「焼き鳥屋さんよ」
「そこですか」
「そう、そこの鶏肉美味しくて」
 そしてというのだ。
「しかも焼き具合もタレもいいから」
「だからですか」
「そこに入って」
「飲んで食べる」
「そうしましょう、焼酎も絶品よ」
「僕ビール派ですが」
「じゃあビールを飲めばいいのよ」
 そちらが好きならというのだ。
「だからね」
「これからですね」
「そう、そのお店に行って」
「そうしてですね」
「飲みましょう」
 そして食べようというのだ。
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