第四十七話「天央祭・[」
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やがて士道を抱えた十香は天井から伸びるキャットウォークの上に降り立った。
「シドー、一体何が起きているのだ…?」
「…」
十香から聞かれた疑問に士道は直ぐに答えられなかった。自らに起きている事を理解するのに少し時間がかかってしまったからだ。とは言えいつまでも相違している事などできない。
士道はキャットウォークへと降り立つと十香に声をかけた。
「ありがとう、助かったよ。でも、十香…おまえ、なんで何ともないんだ?四糸乃達は皆美九に操られちまっているのに…」
そんな疑問を浮かべる士道に十香は
「…ぬ?」
と不思議そうな顔をしたのち、「おお」と何かを思い出したように手を打ってから両耳に手をやった。そして、そこに詰まっていたイヤホンを取り出す。どうやら演奏の時からずっとつけ続けていたらしい。
「お前…それ」
「うむ、どうも片方だけではバランスが悪く、リズムが撮り切れない気がしてな」
「…」
士道は十香の言葉に呆れてしまう。彼女は知らないが十香が演奏で担当していたのはタンバリン。決してそこまでの装備が必要な楽器ではなかった。
「それで、シドー」
「ああ…多分、美九が皆を操っているんだ」
そう言うと十香はステージに立つ美九を見る。美九はキャットウォークに逃れた士道たちを憎々しげに睨みつけると、鍵盤に走らせていた指の動きを変え、〈破軍歌姫〉の音色を変化させた。
すると観客たちが一斉に動き出しステージ袖に入っていく。恐らくステージの裏から来るつもり何であろう。中には何を思ったのか壁をよじ登ろうとする者もいた。
しかし、それ以上に士道たちにとって厄介なのは美九の周りを囲むように立つ四糸乃と八舞姉妹、そして先ほどから客席に座り様子を見ている彼女であった。
四糸乃や八舞姉妹ですら厄介なのにそこに時崎狂三と並ぶ危険度を持つ彼女がいては勝ち目は薄かった。実際、十香は屋上にて呆気なく敗北していた。
「…く」
士道は素早く耳に付けられたインカムを叩く。この場は一旦フラクシナスに回収してもらおうと考えたからだ。
『ハイ、どうしたのかしら?』
通信に出た琴里の緊張感のない声に士道はあり得ないと思いつつも最悪の想定をする。
「琴里!不味い状況になった。外に出るから一旦フラクシナスで回収してくれ!」
『はぁ?』
そして、士道の疑念は次の琴里の言葉で確信へと変貌した。
『何言ってるの?お姉さまに逆らったお馬鹿は、そこでミンチにされてなさいよ』
士道の思い浮かんだ疑念。それは今の状況を更に絶望へと突き落とすものだった。
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