恋人同士が密室で行う事
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(グランバニア城:宰相執務室付属の応接室)
グランバニア城の宰相執務室に隣接している応接室では、とある美男美女が鍵をかけて二人きりで秘密の作業を行っている。
こう言うとイヤらしい事を想像するかもしれないが、残念ながら期待は裏切られる。
室内に居る美男はウルフ。
美女の方はマリー。
秘密の作業とはマリーの書く歌詞の校閲。
何故二人きりで密室で行ってるのかというと、マリーが転生者である事が国家を超えての機密事項の為だ。
流石にマリーの相方であるピエッサにさえも知らせる訳にはいかない。
二人で行うと言ってはいるが、主に作業をしているのはウルフだけ……
彼の知らない単語が出てきた時のみ、その単語が何なのかをマリーに問い答えるだけ。
国内で通用する単語に置き換える作業は全部ウルフの仕事だ。
マリーが歌姫を始めた当初は、ウルフも知らない単語が多かった為、彼女に問う行為が頻繁にあったのだが、回数を重ねていく毎に彼の知らない単語が減っていき、問う事無く歌詞の変換を行っていけている。
と言う事は……
娯楽などの無い密室で、マリーは暇を持て余し始める。
そして毎回の事だが、最初は小声で鼻歌を歌い始めるのだ。
当初は作業を行っているウルフの苛つきを得ていたが、BGMとして聞き流す能力を手に入れた為、シカトする事が出来る様になった。
大体いつもは、これまでに発表した曲の鼻歌だったり、近々発表する曲の反芻練習の鼻歌だったりしたのだが、今日に限っては違った。
♪ファンの子観に来たコンサート?
♪新曲出したら一等賞?
♪ユ〜ラリ揺れてるサイリウム キレイだな?
♪いいね いいね 歌姫(アイドル)っていいね?
♪みんなで仲良くチケット購入?
♪「あ、高い」って思っても支払うんだろうな?
♪君も買いなよ チケット買いな?
♪げん げん 現金払いで 売(ばい)買(ばい)倍(ばい)?
「何だその歌は!? 前半は綺麗で良いなと思ったが、後半は最低じゃないか!」
「うふふ……『げんきんっていいな(作詞:マリー・アントワネット)』って曲よ。最初の『ファンの子』ってフレーズ、心の中では『金づる』って歌ってるの? 良いでしょ」
「良い訳あるか! ファンを金づるとか言うんじゃない。絶対よそで歌うなよ! ファンが減るからな!」
「やだぁ〜……解ってるわよぉ、そんなこと」
「はぁ〜……」
大きく溜息を吐いたウルフは頭を押さえながら元の作業に戻った。
歌詞が気に入ったマリーは、更に何度も歌い続ける。
美男美女の秘密の作業は、この後も続いていくのであった。
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