第六話 INグレンダン(その4)
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ようがない。
とはいえクララが愚痴るのにも一応の理由はある。戦闘が始まって以来汚染獣は四肢を使った攻撃に終始しておりそれを避けながら攻撃するのだが、天剣基準で言えば目を瞑ってでもかわせる程度のものでしかなかった為単調な作業を強いられている気分になっていた。
「我慢しろクララ、というか私より経験豊富なんだからこうなる予想もあったんじゃないのか」
「それはそうですけど。大体ニーナもなんで廃貴族の力を使わないんですか? それに他の剄技だってあるでしょうに雷迅ばかり使ってるじゃないですか」
クララは手を変え品を変え色々な剄技を使用しているがニーナは攻撃のための剄技としては雷迅しか使用していないしメルニスクの力で底上げもしていない。
「メルニスクの力を使っていないのは頼りきりにはなりたくないからだ。今更彼らの力を使うのは私の力では無いなどというつもりはないが、依存しすぎるのはよくないと思うからな」
かつてのように遠慮しているのではなく、かといって廃貴族に頼りきりでは自身の武芸者としての成長はないと考えてのことだ。
「大体クララだって楽しみたいからメルニスクの力で全力を出すのはやめてほしいと言っていたじゃないか」
メルニスクだけでなく他の電子精霊の力も前回にすればその剄力は天剣を遥かに凌駕する。せっかくの戦いだというのにそれをされては楽しめない、ということで開戦前にクララが頼んだことだった。
「あー、そんなこと言いましたっけ? 全く記憶にありませんが」
微妙に明後日のほうを向いてすっとぼけるクララ。
「あのなあ、クララ……」
『なんでしたら、音声記録をお聞かせしましょうか』
呆れるニーナに別の声が被さる。天剣授受者としてグレンダンの念威を纏めるエルスマウだ。
「いえ、それには及びません。でもどうしたんです急に」
通常戦闘中の武芸者に外部から連絡することはない。集中を削ぐ可能性は排除されるのが戦場の鉄則だ。例え親兄弟が死のうともそれは変わらない。
とはいえ天剣ともなればその程度で崩れるような柔な存在ではない。ないが天剣ともなればこと戦場において他者からの助言の類を必要としていない。ゆえに戦場にある天剣に伝える事が無いため連絡されることはない。
『時間です、クラリーベル様も今日は忘れているようなので一声掛けさせていただきました』
「あ、そうでしたね。ニーナがいるのを忘れてました。ニーナ、少し暗くなるので気を付けてください」
何のことかと問い返す間もなく視界の明度が一瞬下がりすぐに回復する。
「さてと、退屈になってきましたしそろそろ終わりにしませんか」
「いや、それよりも今のは何だったんだ」
「後でいいじゃないですか、面倒ですし。それに汚染獣の方も何か変化があるみたいですよ。体が温まってきたんでしょうか」
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