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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
幕間 とある勅任特務魔導官の一日
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がいかんのだ」
 羽鳥はそれをすかさず指摘する。
「貴様は人を試さずにはいられない悪癖を持っている。
そして貴様の基準にそぐわぬ奴は容赦無く排除する。
あぁそうだ。貴様が弾きたい馬鹿は何も気がつかないで貴様を蔑視するだろうさ。
だがな、頭の良い馬鹿は違う。貴様の演技に気付き、怒る。
だから、貴様は毒にも薬にもならない輩には蔑まれ、厄介事を押しつける輩から恨まれるのだ。そして面倒ごとには愛される」
 羽鳥は相手を嘲弄するような内容を悪びれずに語る。
「そして俺の友人は人格者で大人物ばかりと言いたい訳だ」
 新城も皮肉気に口を歪める。
「貴様、自分を褒めてそんなに楽しいか?」

 ――楽しいね。
あっけらかんとした羽鳥の返答にその皮肉な微笑は苦笑へと変わる。
「何だその顔は?俺は紛れもない人格者だぞ。それこそ自分で自分を褒めたいくらいだ」
そう言う羽鳥も今にも嗤い出しそうな表情をしている。
 ――褒めているじゃないか。
 新城も苦笑を深める。
「ん、話が逸れたな。貴様が俺を呼び出した理由は何だ?」
羽鳥はそう言いながら真顔に戻る。仕事に有益な話を聞き出せるかもしれないと考えているのだ。
「俺がこれから如何するべきか、貴様の意見を聞きたくてな」
 戦場の英雄が嘆息する。
「その手の相談は何時も馬堂のガキが相手じゃないのか?
皇宮の土産話なぞ奴が食いつきそうなものだが」
 諜報員はそれに対して気のない返事をする。短い間ではあったが豊久と羽鳥は商売敵として知り合っている。
「駄目だ、あいつは確かにこの手の事が得意だが、馬堂が関われば其方を優先する。
――本人がそう公言しているからな、間違いない」
新城から見ればそれもまた公平さの一つなのだろう。
「ふん、その辺は奴も将家らしい――そうだな、まず一つ、
実仁親王殿下と駒城は完全な一枚板では無い、お前はその間に立つのだ、何方も完全には信用しない事だ。
尤も、貴様の義兄上は別だ。あの御仁は、普通ならとても政治には向かない程の善人だ。それを補う才覚を持つのだから恐ろしいのだが。
もう一つは、守原が妙な動きをしている、貴様だけでなく周りも注意する事だ。」
 そう言った時には羽鳥の瞳には先程までの稚気は無く、高い悟性を感じさせる光が閃いていた。
「守原の妙な動き?おい、それは何だ?」
 羽鳥らしくない、曖昧な言葉を新城が問いただす。
「何が狙いか分からん。兵部省内で何やら工作している様だが、龍州絡みだけではなさそうだ」
 龍州鎮台は軍への再編を急いでいる、遅くとも秋には〈帝国〉軍が来寇するのは確実だ。
 それを迎撃する司令部の参謀人事は五将家の政争の具の一つだ。
 五将家は各家が子飼いの者を入れ、影響力を強めようと画策している。
「大して分かってないのか
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