第24話
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は苦くて酸っぱくて不味いと好評の軍用コーヒーの出番なのではないか。むしろこの紅茶こそ諸悪の根源なのではないか。晴れた昼下がり、穏やかなひと時に半ば現実逃避をしながら給仕する副官。重力の井戸の底とは宇宙の常識が通用しない世界なのかもしれない。
「あんた、常識って知ってるか?」
上がる黒煙を眺めながらヴェルナーは乗機の通信機の向こうに話しかけた。予想外の事態に硬いヴェルナーの声と比べて、通信機の向こうから帰ってくる声は緊張感のかけらもない。
「名前だけなら。見たことはないけど、絶滅したんだろ? 多分パックスのせいだ。今度会ったら文句言ってやれ」
「団長、そういうところだぞー。わかるかー? そういうところだぞー」
レンチェフは来たばかりのヴェルナーと違って平然としている。まだストレイドとの付き合いは短くて浅いが、一回でも任務を共にすればだいたいわかる。
つける薬はない、ということが。つまりは諦めである。
ウラガンが中尉が上司の健康診断を真剣に考え始めた数日後。ストレイド、レンチェフ、ヴェルナーの三人はアラビア半島に来ていた。マ・クベをさんざん強請った結果、求めていた人員が宇宙から来るというので迎えに来たのだ。開発中のYMS-08は使えないということで、レンチェフとヴェルナーはリリアナで使っているGA03-SOLARWINDに乗っている。YMS-08よりは遅いが、それでもザクよりは速いし、操縦感覚はYMS-08に近い。YMS-08の正式採用までのつなぎに乗るには悪くない。ブースト移動の練習がてら、派遣された人員を迎えに行く。それだけのはずだったのだが。
「その人員の乗ったシャトルを連邦の迎撃機もろとも撃ち落とすってのは、どうなんだ?」
「安心しろ。狙い通りだ」
ヴェルナーが疑義に応じるストレイドにレンチェフが突っ込む。
「団長、それはさすがに誤射であって欲しかったな」
「いいんだよ。ちゃんと着陸したんだから」
「着陸ねぇ……まぁ、確かに陸には着いたわなぁ」
「はいはい、終わり終わり。私は予定通りやるから、二人は周囲警戒してくれよな」
そう言うとストレイドは部下の二人を左右に追い払った。
「予定通り!? 聞いてねぇぞ、そんなもん!」
「ヴェルナー少尉、アレはああいうものだと思って受け入れろ。いうだけ無駄だ」
多くのネクスト機はレーダーの性能が低い。速度を最大の武器とする以上、ネクスト機自体は近距離志向が多い。その超高速を生かして距離を詰めるのだ。そのため、特に長距離レーダーに求められる性能は低くなる。今回のチーム編成でいえば、レンチェフとヴェルナーの操るGA03-SOLARWINDには後付けでレーダーを積んである。管制機の代わりだ。戦闘を担当するのがストレイドの機体
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