第24話
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には指揮権を奪取して逆襲に転じて大勝利へと導いた、ある意味で英雄的な人物だ。士官とはいえたかだか一パイロットが部隊を指揮し、殿に残って奮戦からの反転攻勢。後退をしていた他の部隊もこれに追随し、ニムバス率いる部隊は全軍の先頭に立って敵を切り裂き圧しまくり逆転勝利。この間ニムバスは常に最前線でザクを駆り、部隊を指揮し、全軍を鼓舞し続けた。時代が時代なら神話になりそうな活躍だが、戦闘が終結した後に大問題が発覚した。上官から指揮権を奪ったというのは相当に問題がある行為だが、『その程度』ならまだ良かった。例えば上官が心身耗弱の場合等、部下による指揮権剥奪が正当化される例もある。
が、ニムバスはその程度ですむような男ではなかった。ウラガンはマ・クベに尋ねる。尋ねざるを得ない。ニムバス・シュターゼンとは二度と聞こえることのない名前なのだから。
「マ・クベ司令、ニムバス・シュターゼン少佐は上官殺害により銃殺となったはずでは……」
上官殺し。戦闘の混迷が窮まると無能な前線指揮官が部下に戦死させられるという伝説はある。が、それとて不慮の戦死や誰が何処から撃ったか解らない誤射という体裁を調えるものだ。あるいは、そういう形が黙認される程の極限状態で発生するような異常事態だ。戦場でよく聞く、しかし公的には誰も見たことはないという『伝説』である。
しかし、ニムバス・シュターゼンは一味も二味も違った。
上官からの撤退の指示に従わず、業を煮やして現場に来た上官を逆に糾弾、敗北主義者として即座に処刑したのだ。他の兵や士官が見ている前で、衆人環視の下、堂々と上官を殺したのだ。どう控え目に表現しても、錯乱したとしか他に言いようがない。その場で即時拘束ないしは銃殺されるのが妥当な展開なのだが、ニムバスはそこから部隊を掌握し、全軍を勝利へ導いた。まるで部隊全体で共謀して指揮官を排除したかのような話だが、現場にいた士官の誰もが、ニムバスの行為を認識し、隠そうとしない。部隊全体で共謀すれば指揮官の死は戦場の噂話にもならずに適切に処理されえるのに、ニムバスも部下も誰もが堂々と上官殺しを認めているのだ。ニムバスのカリスマというのか人格汚染というのか、なんであれ恐ろしい影響力である。あまりの異常事態に、背後関係の詳しい調査のために処刑が中止されたほどだ。しかし、中止は中止、撤回ではない。これを覆せる人物となると……
「どうせ殺す人間ならと、私が身柄を預かったのだ。二階級降格と合わせてな」
それよりもう一杯貰おうか、と差し出されたカップに紅茶を注ぎながら、ウラガンは地球産の紅茶に正気を取り戻す効能がないことを恨んだ。コロニー産の紅茶にもそんな効能はないが、マ・クベだけが口にしているものといえば趣味で私物の紅茶くらいのものだ。ウラガンは主と違ってコーヒー党である。やはりここ
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