暁 〜小説投稿サイト〜
呉志英雄伝
第九話〜予兆〜
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
が南方に陣取ったのだ。


「しかしこの機を見逃さなかったのは我々だけではないようだな」

「桃蓮様…残念ながらそのようですね」


二人で遠方の宛城を見やる背後から、彼らの君主である桃蓮が歩み寄り、会話に入ってきた。
桃蓮の言う『機』とは当然兵糧が底を尽く今、ということ。そして見逃さなかった勢力とは…


「やはりあの古狸も出張ってきたか」


忌々しげに奥歯を噛み締める桃蓮。彼女に古狸と呼ばれたのは荊州太守にして、荊州における紛うことなき最大勢力・劉表。
彼らは孫呉が何とか捻出して出陣した4万という軍勢をあざ笑うかのように、その倍以上に当たる10万の兵を率いてきた。現在は呉の陣より20里ほど前方に待機している。
だがこの地に目を付けた勢力はもう二つあったのだ。
一方は汝南の雄・袁術、そしてもう一方は官軍である朱儁。
どちらも8万の軍勢で押し寄せている。
黄巾20万 対 討伐軍30万という大戦が今起ころうとしていた。










「ふむ」

孫呉の陣、桃蓮の天幕。
君主である桃蓮の過ごす場として相応しいほどの大きさの天幕には、遠征に連れられた18名の将がすっかり収まっていた。
中央には軍議用の机と椅子が置かれ、将各々が自分の席に鎮座する。
その机の上には城の見取り図のようなものが置かれていた。


「固いな」


上座に座る桃蓮のすぐ側に鎮座する祭は、目の前の図を見てそう漏らした。
その対面に座る冥琳もその言葉に肯く他ない。


「向こうの戦力は20万、実質戦力としても16万はいるでしょう。それに比べて我らは4万。しかも安昌の港に5千の守備隊を置いているのです。到底我らだけでは太刀打ちできません」


冥琳の言葉に周囲は沈黙に陥る。


「更に今回は怨敵たる劉表もいるのだ。袁術も朱儁も我の強い者だ。連携など夢のまた夢だろうな」


桃蓮の付け足しで、場の空気はまた一段階重くなる。
相手の兵力を鑑みるに単独での攻撃は不可能、かと言って共闘しようにも周りが協力しないことは明白。八方塞がりもいいところだ。
大人しく他勢力が動き出すのを待つしかない。そう誰もが感じていた時…


「協力しないのであれば、せざるを得ない状況に追い込めば良いのです」


赤髪の少年は口を開いた。


「兵糧を失えば、向こうは打って出るしかありません」

「しかし、まだ兵糧は一月は持つものと思われますが…」


江の言葉にやんわりと反論を発するのは思春。
彼女の言葉通り、黄巾の兵糧はすぐさま尽きる程には切迫していなかった。


「ならばその僅かながらの兵糧さえも消してしまえばよい」

「っ!…なるほど〜」


江の考えが読
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ