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呉志英雄伝
第八話〜胎動〜
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その表情に浮かぶは嘲りか狂気か。
いずれにせよ真っ当な感情など皆無であることは必然であった。








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所変わって孫呉の本拠地、長沙。
江と明命が出征した湘江西岸での一戦を最後に、頻発する賊の出現がようやく一段落し、つかの間の平和を享受している孫呉では、来る戦に備え軍議が重ねられていた。


「天下を獲るというのなら、大方針としてまずは江陵以北の劉表を打倒しないと」

「ええ、それに奴とは昔から仲が険悪だったから、それで何ら問題ないわ」


軍議の席には孫呉の参謀である焔、冥琳、夕、穏、そして軍権を持つ祭、江、雪蓮、最後に君主である桃蓮がいた。


「ただ乱に乗じて、というのは少しばかり風聞によろしくないでしょうね」

「うむ、儂は乱を終結させ、その後漢室の権威が失墜したことを世に知らしめてから事を起こすべきじゃと思うておる」

「私も同意だ。今は乱の最中。民を守らずして天下など世迷言もいいところだ。それに余裕がなくなればそれだけ人は短絡的になるからな」

「なるほど〜、つまり今起こせば、『乱集結を遅らせる』、そして『王朝の命に背く』という二重の非難を浴びてしまうということですね〜」


最近になって成長著しい双丘を揺らしながら、穏はうんうんと頷く。その様子を夕が忌々しげに見ていたことには敢えて触れないでおこう。
さて、ここで上記の会話の流れをまとめておくと、

・直近の目標は他勢力との共闘にて、荊州北部にある南陽に巣食う約20万の黄巾勢力を打倒すること
・乱集結まで導き、世相の漢室に対する不満と懐疑が蔓延したところで、漢からの独立を宣言
・長年に渡る因縁を持つ荊北の劉表を破り、荊州全土を掌握

となる。
荊州は過去『楚』という大国があった土地。
広大な領土と南蛮との交易により、国を富ませることは難しいことではない。人口もかなり多い。国力を上げるにはそう時間はかからないだろう。
そして全ての準備を終えたら、中原へと進軍していけばいいのだ。


「でもここから南陽までは随分と距離があるんじゃないかしら?」


どうやら最近の雪蓮は雰囲気をぶった切ることに長けているように感じる。
しかしこの雪蓮の指摘は至極真っ当なものなのだ。長沙からでは、江陵、襄陽と二つの大都市を隔てる場所に位置するため、参陣するにもかなりの労力を必要とする。
不幸中の幸いか、南陽付近までは長江からその支流である襄江、そして更にそのまた支流である白河を経由することによって船で行くことが出来るのだ。


「そうなると不安が残りますがね…」


それは江のみならず、他の
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