暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少?リリカルなのは UnlimitedStrikers
Duel:10 響
[6/15]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
全力で知らぬ存ぜぬを押し通すことに。いや、そもそも俺は現状男に戻ってるわけだし、背丈も違う。だから、バレる事はない!
 眼の前の女の子は、不思議そうにカクンと首を傾げて。

「人、違い……? ごめんなさい?」

「こちらこそ、ぶつかってごめんね」 

 自然と、エリオやキャロにやるように頭を撫でてやってから。不味いかなと思う。相手はこちらを知らない以上軽率だったかと後悔する。

 が、気持ちよさそうに目を細めたのが見えてホッと一安心。そのまま頭から手を離して。

「それじゃね」

「……バイバイ」

 後ろ手に手を振りながらその場を後に。声が聞こえて良かったと、もう一度安心。

 改めて周囲の気配を探りながらとりあえず違う場所へ移動して……。

 ―――だからなんだろう。俺もあちらも、全く同じ様に気配を消して、お互い同じ癖を持っていたからこそ。

「え、あ。失礼」「……すまない」

 旅館の外へ通じる曲がり角に差し掛かった時にぶつかってしまった。こちらはともかくあちらは見るからに女性と分かった。というか。つい先程名前の挙がったサトさんその人で。また緊張が奔る。
 ……同名の方の写真とそっくりだけど、雰囲気は全然違うなーなんて考えて。

 だけどお互いに顔を合わせ、前髪に隠れた銀色の瞳が見えた瞬間―――




 ―――世界が反転したかのような錯覚を覚えた。



 呼吸が止まった様な、心臓が一瞬止まった様な息苦しさと衝撃を感じる。

 そこで察した。理解してしまった。今朝も、昨日の夢が……あれは本当にあったものだと。そして、それを経験したのが文字通りの―――

「……な、ん。お前、まさ……か」

 声が震える。更に頭に入ってくる情報量の多さに目眩がする。
 それは、あちらも同じらしく。小さく震えながらこちらを見据えて―――

「は、はは……嘘、だろ」

 ズキン、と頭が痛む。心臓が早鐘のように打つ。

 だが。

 眼の前の人物は、こいつは違うと理解してしまった。俺はこいつに何も言ってはいけない、と。俺では駄目だ、と。

 だからこそ……身が粟立つような。眼前の殺意を受け止める他ないのだと。
 
 初めてこの世界に来た日に夢を見た。

 皆が居なくなる夢を。一人置いていかれた夢を。夢だと言うのに心が裂かれるような、呼吸の仕方を忘れた様な苦しさが襲ってきた。

 煌が、優夜が、時雨が。その体を残すことすら許されず消滅させられ殺されたという事実を突き付けられた。

 紗雪が、二人を逃した結果一人で戦い、倒されてしまったこと。

 震離が、流と共に部隊へ向かい、そしてその地で、腕を落とされ熱にさらされ命を落としたこと。

 そして、奏は―
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ