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母の秘密
第一章

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                母の秘密
 小学六年生の稲葉小奈美はこの時学校のトイレで友人達にはっきりと言った。
「うちのお母さんはないから」
「そんなことないの?」
「全然?」
「そう言うの?」
「だってお母さんはね」
 小奈美は強い声で言った、黒髪をポニーテールにしていてきりっとした眉と切れ長の二重の目に長い鼻と白い肌、大きめの薄い唇は母親譲りだ。
 その母についてだ、小奈美は友人達に手を洗いつつ話した。小学校の濃紺と白、そして赤もある制服も似合っている。
「凄く真面目でしっかりしてるのよ」
「大学の法学部主席卒業でね」
「しかも公立の
「司法試験も受かってて」
「弁護士さんしながらあんたとお兄さんのお母さんで」
「家事もちゃんとして」
「凄い人だっていうのね」
 友人達も彼女に言う。
「それでそんな人がね」
「いやらしいか」
「夜は凄い変態とか」
「そんな筈ないっていうのね」
「お父さんも別にね」
 大学教授である父もというのだ。
「そうした感じじゃないし」
「いや、お昼はそうでもよ」
「お仕事しっかりしててもね」
「それでいいお母さんでもよ」
「夜はわからないみたいよ」
「夫婦生活はね」 
 友人達もそれぞれ手を洗ったり鏡の前で身だしなみチェックをしつつ小奈美に話した。女子トイレの中は案外忙しいのだ。
「それぞれの趣味っていうし」
「真面目な人が実は変態とかね」
「SMとかやってたりとか」
「結構人に言えない趣味あるみたいよ」
「それぞれね」
「SMって」
 覚えたてのそうした方面についての知識からだ、小奈美は自分に言った友人達に対してそのきりっとした眉を顰めさせて言った。
「そんなのね」
「ないっていうの?」
「あんたのお母さんは」
「そんな趣味ないっていうの」
「ないわよ、浮気とか絶対にしないし」
 このことは確信していたので最初から考えていない。
「あとさっき誰かが言ったけれど」
「コスプレね」
 その言った娘が言ってきた、笠原美奈子である。小奈美より幾分背が高く髪の毛はショートでやや茶色い。目は細い感じだ。
「それね」
「そうよ、ええと」
「コスプレって言っても色々でね」
 美奈子は小奈美にすぐに答えた。
「水着とか制服とか」
「私達が着てるみたいな?」
「セーラー服とかブレザーとか」
「中学生や高校生の人が着るみたいな」
「そんな服を着たり」
 美奈子は小奈美にさらに話した。
「体操服とか」
「ああ、半ズボンの」
 小奈美はここでも自分の知識から述べた。
「上は白で」
「いや、それがブルマってね」
「ブルマ?」
「何でも色は半ズボンと同じでも」
 それでもというのだ。
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