第五章
[8]前話
「そしてまた畑仕事をする」
「それだけか」
「それ以外に何をするんだ」
ミクーラはそれはという返事で老婆に尋ね返した、
「俺は農夫だぞ」
「だからじゃな」
「そうだ、農夫は畑仕事をする」
「それが仕事だからか」
「村に帰ってそれをする」
畑仕事、それをというのだ。
「これからな」
「そうか、妖怪退治をしてその名で王様に仕えることはせんか」
「そんなことには興味がない」
ミクーラの返事は変わらなかった。
「俺にはもう畑があるからな」
「そうか、ではな」
「これから村に帰る、それでお前はどうする」
「わしのやることは決まっておるわ」
笑ってだ、老婆はミクーラに答えた。
「これまで通りじゃ」
「あの小屋に住んでか」
「ロシアのあちこちを旅してな」
そうしてというのだ。
「遊んで悪人供を食ってじゃ」
「そうしてか」
「暮らしていくわ」
「そうか、わかった」
ミクーラは老婆のその言葉に頷いた、そのうえでこう言った。
「なら達者でいろ」
「あんたもな」
二人は最後は笑顔で別れた、老婆はその小屋に戻って鶏の足を動かさせて何処かへと去った。そしてミクーラもだ。
行きの時と同じく悪い妖怪や悪人を倒しつつ村に戻った、そして村に戻ってこう言った。
「悪い奴等を退治してきた」
「じゃああの婆さんもかい」
「あの婆さんはやっつけていない」
老人にこのことを素直に答えた。
「悪い奴じゃなかったからな」
「人を食うのにかい?」
「食うのは悪い奴だけだった」
ミクーラは老人に素直にこのことを話した。
「教会に入っても平気だった」
「ああ、じゃあ実際にな」
その話を聞いて老人も頷いて述べた。
「あの婆さんは悪い奴じゃなかったな」
「そうだ、悪い妖怪じゃなかった」
「だからだな」
「俺は退治しなかった」
「それで他の悪い奴等をだな」
「やっつけて戻ってきた、そして」
ミクーラはここで老人に微笑んでこうも言った。
「今からまた畑仕事だ」
「百姓に戻るかい」
「そうする、また働く」
微笑んで言ってだった、ミクーラは実際に農具を手に取った。そうして早速畑仕事を行った。ロシアの力持ちと農夫と妖怪の老婆の話はこれで終わりであった。
不思議なお婆さん 完
2019・2・15
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