第三章
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「それから」
「決まっている、村に帰ってだ」
ミクーラは老婆に即座に答えた。
「元の暮らしに戻る」
「わしが持っている金貨や魔法の道具はいらんか」
「そんなものを持ってるのか」
「そうしたものはいらんか」
「今知ったが俺はそんなのいらない」
ミクーラは老婆にはっきりと答えた。
「何の興味もない」
「金もよい道具もか」
「俺はちゃんと家があって畑もあって暮らせている」
村に帰ればというのだ。
「だからだ」
「そうしたものはいらんか」
「一切な」
「そうした者は食わんわ」
「そうなのか」
「しかしやっつけるのならな」
それならというのだった。
「わしも迎え撃つぞ」
「そうか」
「それでどうするのじゃ」
「お前は悪い奴しか食わないと言ったな」
「そうじゃ」
その言葉に偽りはないとだ、老婆も答えた。
「悪い奴だけじゃ」
「食わないのか」
「そうじゃ、何度も言うがな」
「その言葉は本当か」
「信じられんか」
「お前を悪い奴だと聞いているからな」
「そうか、ならじゃ」
自分の言うことが信じられないのならとだ、老婆は少し考えてからだった。そのうえでミク−ラに対して述べた。
「わしを教会に連れていってイコンを見せるなり聖水を浴びせるなり讃美歌を聴かせるなりしてみるのじゃ」
「悪い妖怪ならそれでか」
「そうじゃ、滅びるじゃろう」
「そうだな、お前はどう見ても人間じゃない」
「人間があんな家に住んでおるか」
その家を長い爪がある皺がれた指でだ、指差して老婆はミクーラに話した。
「そもそも」
「それは俺もわかる」
「そうじゃ、わしは人間ではない」
「妖怪だな」
「そうじゃ、悪い妖怪なら教会は駄目じゃ」
それこそというのだ。
「だからじゃ」
「そこに連れて行って確かめろか」
「そうせよ」
「わかった、ならな」
ミクーラはバーバ=ヤガーの言葉に頷いた、そうして実際に老婆を近くの村の教会に連れて行った。そうして神に仕える者に会わせたり讃美歌を聴かせてイコンを見せたりもした。だが全くだった。
老婆は動じない、それでミクーラもわかった。
「お前は悪い妖怪じゃないな」
「これでわかったな」
「そしてか」
「悪い奴だけじゃ」
それはというのだ。
「何度も言うがのう」
「そうだな」
「さて、それでじゃ」
教会の中でだ、老婆はミクーラに尋ねた。
「どうするのじゃ」
「お前をやっつけるかどうかか」
「そうじゃ、どうするのじゃ」
「そのことだな」
「勿論向かって来てもいい」
老婆は戦いは否定しなかった。
「そうしてもな」
「そうなのか」
「そうじゃ、しかしじゃ」
「それでもか」
「お前さんは随分強いじゃろう」
「ロシア一の力持ちだ」
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