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不思議なお婆さん
第二章

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 遂にだ、彼はバーバ=ヤガーの家を見付けた。その家はボルガ川の近くにあって実際に巨大な鶏の一本足の上にあった。
 粗末な小屋で小屋の周りには人骨がこれでもかと積み上げられている。そして鶏の足は楽しそうに踊っている。
 それを見てミクーラは身構えそうして小屋の中に乗り込み老婆を倒してやろうと思ったがその時にだった。
 後ろからだ、皺がれた老婆の声がしてきた。
「わしに何か用か」
「その声は」
 ミクーラが振り向くとそこにだった。
 一人の老婆がいた、皺だらけの顔に長く曲がった鼻とやたら長い白髪を持っていて着ている服は黒く粗末なものだ。
 大きな石臼の上に座っていて手には箒がある、見れば臼は前に動いていて箒で臼が動いた跡を消している。
 その老婆がだ、ミクーラに言ってきた。
「どうせお前さんあれじゃろ」
「あれとは何だ」
「わしをやっつけに来たんじゃろ」
「何故わかるんだ」
「今わしの家に乗り込もうとしておったからじゃ」
 それでというのだ。
「わかったわ」
「そうだったか」
「今にもと身構えていてはじゃ」
 それこそというのだ。
「一目瞭然じゃ」
「そういうことか」
「それでじゃ」
 老婆はミクーラにあらためて言った。
「名乗るぞ」
「あんたがバーバ=ヤガーだな」
「如何にも」
「俺はミクーラだ」
 ミクーラは自分から名乗った。
「あんたが名乗る前にあんたの名前を言ったがな」
「あんたは自分で名乗ったな」
「そうだな、それでだが」
「うむ、わしをじゃな」
「今からやっつける、覚悟しろ」
「そう言うがわしにお前さんにやっつけられる理由はない」
「だが俺にはある、あんたの話は聞いている」
 老婆を睨んで怒った顔になってだ、ミクーラは彼女に告げた。
「旅人や子供を捕まえて食っているな」
「家で使用人として使ったうえでな」
「自分で認めたな、ならだ」
「わしをこれから倒すか」
「そうする、覚悟しろ」
「そうは言うがわしは確かに旅人や子供は食うが」
 しかしとだ、老婆は言うのだった。
「悪い奴しか食わんわ」
「そうなのか」
「いい者は食わん、だからあんたもじゃ」
「食わないのか」
「そうじゃ。あんたは見たところいい奴じゃ」
 ミクーラにこうも言うのだった。
「なら余計に食わん」
「それがわかるのか」
「目を見ればわかる、それにわしが悪いことをしていると聞いてやっつけに来たのじゃな」
「その通りだ」
「それならじゃ」
「俺は悪い奴じゃないとわかるか」
「わしを倒してどうするつもりじゃ」
 それからどう考えているのかもだ、老婆は彼に尋ねた。
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