第二章
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「そしてこの二つを届けてくれ」
「先生、これは」
「言ったな、わしはここで死ぬ」
この五稜郭でというのだ。
「だからだ」
「ご家族にですか」
「この二つを届けて欲しいのだ」
是非にという言葉だった。
「いいな」
「先生、僕はです」
市村は髪と写真を差し出す土方に返した、強い声で。
「この五稜郭に討ち死にする気で来ました」
「武士としてか」
「はい、幕臣として」
この立場でというのだ。
「その為に来ました、ですからこの役目は別の者に」
「市村君、君はまだ若い」
土方はまずはこのことから市村に告げた。
「後がある、そして君ならばだ」
「日野までですか」
「辿り着ける、だから頼むのだ」
「ですが」
「わしの最後の命令だ、隊の命令は絶対だ」
新選組の厳しさも出して告げた。
「士道不覚悟となる、ならば」
「その時は」
「わかるな、わしは君を斬る」
新選組の掟に則り、というのだ。
「そうする、いいか」
「では」
「行くのだ」
また髪と写真を出して言うのだった。
「いいな」
「・・・・・・わかりました」
隊の掟そして土方の気迫の前にだった、市村も頷くしかなかった。こうしてだった。
市村はその二つのものを受け取ってそのうえで五稜郭を後にした、この時に彼は誰かが窓にいることに気付いた。だが彼はこの時は振り向かなかった。
土方は市村が去ってからだ、窓から離れてだった。自ら榎本のところに行ってこれからのことを話した。何もなかったかの様に。
そして五月十一日だった、新政府軍は遂に五稜郭に総攻撃を開始した。その前に土方は辞世の句を残していた。
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