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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
エピローグ
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……だから、そんなデュエルじゃ届かないって」
「いかにも巴の奴らしいやり口だな……そんなもん、聞き流しとけよ」
「でも俺、自分のことだからわかるんすよ。そうやって言われた時、最初は俺も思いました。これは罠だ、聞く価値なんてない妄言だって。だけど本当は、心の奥底では、あいつの言うことの方が正しいんじゃないかって……!」

 途中で言葉が消えていき、顔をくしゃくしゃに歪めて体を震わせる鳥居。彼の中では今、爆発した感情が行き場もなくなっていた。敗北による悲しみ、苦痛、恐怖……しかし圧倒的に大きいものは、何も言い返すことのできなかった自分自身に対しての悔しさだった。
 そしてその気持ちは、糸巻には痛いほどよく分かる。それまでの自分自身を全否定され、だというのにそれを甘んじて受け入れるしかない。かつて、彼女自身もそうだった。ずっと続くと思っていたプロデュエリストとしての日々から一転し、四方から浴びせられた罵声と迫害。自分と同じデュエリストのせいで数多の死傷者と被害が出たのだと遺族に直接詰め寄られた時も、彼女には一切の申し開きができなかった。ただ唇を噛みしめ拳を握り、その両方から血が出るほどに力を込めるだけ。彼女に、何か言う資格などなかったのだから。
 重苦しい沈黙に包まれる中、やがて鳥居がどうにか落ち着きを取り戻す。

「すんません、糸巻さん。俺らしくもないっすね。今聞いたことは忘れてください……いつかきっと、俺の手で答えを出してみせます」
「おう、そうか。その意気だ」

 またしても短い沈黙。いつかきっと、と彼は言った。しかしそのいつか、とは一体いつになるだろうか。たとえ傷が完治したとしても、今の決定的に大切なものをへし折られた彼にまともなデュエルを行うことなど不可能だろう。まして彼が折り合いをつけて答えを出すべきエンタメデュエルは、ただでさえ常人以上の精神力を必要とするものだ。答えの見えない問いが宙に浮き、その不透明さと先の暗さがのしかかる。
 そこでよし、と手を叩いたのは、糸巻だった。彼女にはもう少し目先の問題で、考えるべきことがあったのだ。

「この話はやめだ、やめ。それよか鳥居、お前『アレ』どーする気だ?その様子だと出るのは無理だろうが、もう1週間もねえぞ」
「あー、『アレ』っすか。正直、俺もノープランです。でも、一応本部からも応援は来るんすよね?」
「そりゃまあ打診はしておいたけどな、正直今からお前の穴埋めなんて出せるかどうかは微妙なとこだな。ある程度腕っぷしがよくて、なおかつアタシら(デュエルポリス)寄りの人間……」

 謎めいた言葉を挟み、2人して頭をひねる。ちょうどその時、ドアがババン、と音を立てて勢いよく開いた。そして息せき切った少女と共に、見覚えのある少年が何かの入った紙箱を手に顔を出す。

「ハア、ハア
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